めまいの原因の6割は「耳の異常」からきています。
朝起きるとぐるぐると目が回る症状は【良性発作性頭位めまい症】の可能性が高いです。症状から治療法までご説明します。
朝起きると目が回る【良性発作性頭位めまい症】とは
ぐるぐる目が回るめまいの原因で一番多いのが「良性発作性頭位めまい症」です。
めまいに悩む患者さんで全体の【20~40%】いると言われています。
良性発作性頭位めまい症の症状
- 朝起きたときや、起き上がったときに天井がぐるぐるまわっていた
- 寝ていて寝返りをするとぐるぐる回って見えた
基本的に吐き気はなく、数秒~数十秒と短期間でおさまるのが特徴です。
良性発作性頭位めまい症 どんな人に多い?
- デスクワークの人
- 長時間同じ姿勢であまり動かずにいる人
- 運動不足の人
- 寝相がいい人
60~70代の女性に多くみられるので、骨粗しょう症の影響も指摘されています。
なぜめまいがおきる? 耳の構造
引用:さかした耳鼻咽喉科
耳は外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つの部分に分かれています。
耳の構造
私たちが普段見ている「耳」と呼んでいる部分は「外耳」という部分です。音を集めて鼓膜へ伝えます。
鼓膜の奥に「中耳」があります。鼓膜には小さな骨がつながっていて、鼓膜に伝わった音が小さな骨に伝わり、音を大きくしてさらに奥へ伝えます。
そのほかにも
- 気圧を調節する役割
- 耳の中を衛生的に保つ役割
もあります。
中耳の奥には「内耳」があります。この「内耳」が全身のバランスに大きくかかわっています。
「内耳」の部分に異常がおこるとめまいなどの症状につながります。
内耳の中には「三半規管」「前庭(耳石器)」「蝸牛」という器官がはいっています。
「三半規管」の中には「リンパ」という液体が入っています。
「前庭(耳石器)」はお皿のようになっており、お皿の上に「耳石」という砂のようなカルシウムの粒がたくさんのっている構造をしています。
私たちの身体は「リンパ」や「耳石」が動くことで身体の平衡感覚を得ることができます。
あなたが右を向くと、「リンパ」や「耳石」がサラサラと動き、「今、私は右を向いたな」と感じる仕組みです。
ぐるぐる目が回る時の耳の状態
【良性発作性頭位めまい症】の時の耳の状態はどうなっているのでしょう。
いつもは「前庭(耳石器)」の上にのっている「耳石」の一部が何かの衝撃で剥がれます。
剥がれた「耳石」が「三半規管」に入り込んでしまうと、身体が揺れていると勘違いし「めまい」がおきます。
「耳石」がどうして剥がれてしまうのか、はっきりした原因は分かっていません。
- 加齢とともに剥がれやすくなる
- スポーツなど頭を強く打った時に「耳石」が剝がれやすくなる
- 疲れやストレス
などがあげられます。
また、「耳石」は小さなカルシウムの粒なので、カルシウムの代謝がうまくいかない時も剥がれやすくなります。
そのため「骨粗しょう症」も「良性発作性頭位めまい症」の原因となりますね。
良性発作性頭位めまい症の診断から予防まで
良性発作性頭位めまい症はどのように診断されるのでしょう? 耳鼻科に受診した際の検査や、治療法をご紹介します。
良性発作性頭位めまい症の診断方法
良性発作性頭位めまい症かどうか調べるためには、まず「聴力検査」で聴力に異常がないか調べます。
良性発作性頭位めまい症は聴力に異常が出ないので、もし聴力に異常がある場合は「メニエール病」や「突発性難聴」を疑います。
次に「頭位眼振検査」や「頭位変換眼振検査」を行います。フレンツェルめがねを使用し、頭を動かし眼球の動きを見ます。
「良性発作性頭位めまい症」は頭を動かすと症状が出るので、どの向きに動くと異常が起こるのかを確認します。
良性発作性頭位めまい症の治療法
「良性」なのでほとんどの人が自然に治ります。症状によって吐き気止めなどが処方されますが、薬も必要ない場合がほとんどです。
多くの方が1~2週間で日常生活に影響が出なくなります。
発症して1ヶ月ほどでめまいが消える場合が多く、後遺症も残りません。
昼間はめまいのする体勢や頭位をとらないようにしましょう。
「良性発作性頭位めまい症」はめまいのする方向へ頭を動かすことが効果的です。
頭を動かすことで「耳石」の位置が変わり、めまいが治まるからです。めまいのする方向に寝返りを何度かうつことも有効です。
良性発作性頭位めまい症の運動療法
患者自身で行う運動療法もあります。
- ベッドの中心あたりに、足を下ろして座り、体をゆっくり横に倒して、そのまま60秒数えます。
- 60秒数え終わったら、体をゆっくり起こして元の姿勢に戻ります。
- 次にゆっくり逆側に倒れて横になり、60秒数えます。
- そしてまた、ゆっくり体を起こして元の位置に戻ります。
左右1セットにして3回。これを1日1回、寝る前に行います。
寝る前に行うと、寝がえりや起床時のめまいが起こりにくくなります。最初は、頭の位置を変えるとめまいが起こることがありますが、続けているうちに、徐々に症状が軽くなります。
引用:NHK
あえてめまいのする方向へ頭を動かすことが大切です。
最初はめまいをともなうので、寝室などすぐ休める場所で行ってくださいね。
良性発作性頭位めまい症の予防方法
一度めまいを体験すると、「まためまいが起きるんじゃないか」と不安になりますよね。
しかし「良性発作性頭位めまい症」は頭を動かす方が効果的です。
可能な範囲でいろいろな方向を向くようにしましょう。寝るときもずっと横向きになるのは避けましょう。
寝るときのまくらも高いものがいいです。「耳石」が「三半規管」に入るのを防ぎます。
寝返り体操も効果的です。
引用:サワイ健康促進課
「良性発作性頭位めまい症」はストレスが大きくかかわっています。あまり神経質にならずに余裕のあるときに行いましょう。
ぐるぐる目が回るのは他の病気かも
ぐるぐる目が回る症状がでる病気は他にもあります。
メニエール病
同じようにぐるぐる目が回る「回転性」のめまいが起きます。良性発作性頭位めまい症はめまいの時間が短いですが、「メニエール病」は10分~数時間と長く症状が続きます。
「耳が聞こえにくい」「耳鳴りがする」など、聴力に異常が出ることが多いです。
診断された場合は内服薬を中心に治療し、症状が重い方は点滴なども施されます。
悪性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症は耳が原因ですが、「悪性発作性頭位めまい症」は脳の異常が原因で症状が出ます。
めまい以外にも「頭痛」「手足のしびれ」「ものが二重に見える」の症状や、「意識を失う」こともあります。
良性発作性頭位めまい症と症状は似ているので、注意が必要です。このような症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
朝起きると目が回るのはなぜ? 良性発作性頭位めまい症とは? まとめ
- ぐるぐる目が回るめまいは「良性発作性頭位めまい症」の可能性が高い
- 耳石が三半規管に入るとめまいが起きる
- まずは耳鼻科で診断をうけよう
- 運動療法・寝返り体操も効果的
- できるだけストレスをためないように生活しよう
「良性発作性頭位めまい症」は、同じ頭の位置でめまいの症状が出やすいので再発する可能性が高いです。
朝起きると目が回る時は「すぐ治まるだろう」と思わずに、耳鼻科を受診しましょう。
めまいはストレスや生活習慣に関連があると言われています。ストレスをためない、規則正しい生活を心がけましょう。