ここ数年、外食より中食の機会が増えた方は多いのではないでしょうか。
専門店でも、家庭向けに通信販売を行っているお店がありますが、ジビエなどは寄生虫が心配…と購入をためらう方も。
食材表面の加熱では死なない寄生虫の種類や、対処方法を解説します!
寄生虫は加熱しても死なない?!食中毒防止の対策
農林水産省が推奨する、主な対策は下記です。
- 食材を充分に加熱して、中まで火をとおす。
- -20℃以下で48時間以上冷凍する。
※ただし、寄生虫の種類によっては長期間生存するため注意する。 - サケ、タラ、サバ、イカや淡水魚など、寄生虫が多い魚介類を生で食べる場合は、充分に注意が必要。
- 生で食べる野菜は、調理前に流水でよく洗う。
※野菜にも寄生虫の卵がついている可能性があるため注意する。 - 生の肉、魚介類、卵にさわったあとは、よく手を洗う。
- 包丁やまな板を使うときは、加熱しない食品を先に切り、生の肉や魚介類はあとで切る。
※生の肉や魚介類を切った包丁や、まな板はすぐに洗い、調理済みの食品がふれないようにする。
寄生虫の危険がある食材について
ここでは、寄生虫の危険が高い食材について解説します!
寄生虫が原因で、食中毒をおこす可能性がある食材は、生鮮魚介類やジビエ、食肉などです。
生鮮魚介類
サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、タラ、サケ、イカ、ヒラメなどに寄生しています。
ジビエ
シカ、イノシシ、クマなどに寄生しています。
食肉
牛や豚、馬の加熱不十分な肉や、生肉にも寄生虫の危険があります。
寄生虫の種類と実際の症状、食材の下処理について
食中毒の原因となる主な寄生虫や、実際の症状、食材の下処理について解説します。お刺身やジビエ好きの方は、ぜひ参考にしてくださいね。
寄生虫の種類や実際の症状
アニサキス
夏から秋にかけて発生することが多い寄生虫です。アニサキスの幼虫に感染した生鮮魚介類を、生で食べることで感染します。
虫体1隻(=1匹)の感染でも、アニサキス症を発症する危険があるため、注意しましょう。主に、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの内臓に寄生しています。
魚介類の死後に筋肉へ移動することがあり、内臓以外の生食でも、食中毒になることがあります。症状として多いのは、下記2つです。
<急性胃アニサキス症>
食後数時間後から10数時間後に、みぞおちの激しい痛み、吐き気や嘔吐の症状がでます。
<急性腸アニサキス症>
食後、約半日から数日後に、強い下腹の痛みや、下痢、吐き気や嘔吐、発熱、寒気、脈が速くなるなどの症状がでます。
アニサキスが原因の食中毒は、ほとんどが急性胃アニサキス症です。強い腹痛があり、アニサキスが原因の食中毒と思われる場合は、すぐに病院を受診しましょう。
クドア・セプテンクタータ
元々知られていたクドア属の寄生虫には、人への影響はないとされていました。しかし、新しく発見されたクドア・セプテンクタータは、食中毒の原因になることが報告されています。
8月ごろから10月にかけて発生することが多い寄生虫です。感染したヒラメを、生や不十分な加熱状態で食べることで食中毒になります。主にヒラメに寄生し、食後数時間で、一過性の嘔吐や下痢を起こします。
サルコシスティス
サルコシスティス属の中にも複数の寄生虫がいます。感染した食材を生や不十分な加熱状態で食べると、それが原因で食中毒を起こす点は共通ですが、宿主や症状に違いがあります。
牛や豚につくタイプは、食後3~6時間で下痢や嘔吐、腹痛などの症状がでても、1日程度で治まることが多いです。
シカや馬につくタイプは、食後数時間で下痢や嘔吐の症状が見られ、一過性の症状が多いとされています。
トキソプラズマ
豚や羊、ヤギの生肉、または加熱不十分な肉や、ヤギの生乳が原因となることが多いです。
トキソプラズマは感染しても無症状だったり、頭痛や軽い発熱など症状が軽いまま治まることが多いです。ただし、免疫が低下している人は症状が重くなるため、注意しましょう。
妊娠中に初めて感染すると、母親から胎児への胎盤感染で流産することがあります。胎児が感染すると、先天性トキソプラズマ症が発生することがあるため、妊娠中の方は特に注意してくださいね。
トリヒナ(旋毛虫症「せんもうちゅうしょう」)
クマの生肉や、豚が原因で感染します。特徴的な症状は、かゆみや発疹、顔のむくみ、筋肉痛や倦怠感などです。腹痛や下痢、吐き気などが出ることもあります。
最悪の場合、感染してから4~6週間後、貧血や呼吸麻痺、心筋炎、肺炎などを起こして死亡することもあるため、注意が必要です。
食材の下処理方法について
どの寄生虫の場合も、加熱または凍結処理が推奨されています。
ただし、家庭用冷蔵庫の冷凍機能は、-18℃が基準になっているものが多いです。凍結処理をしたい場合は、冷蔵庫の機能も確認しましょう。
アニサキス
新鮮な素材を選ぶのはもちろんですが、内臓付きの場合は、できるだけ早く内臓をとりましょう。また、内臓は絶対に生で食べないでください。
内臓をとったあとも、身の部分にアニサキス幼虫がいないか、目で確認しましょう。
すべてのアニサキス幼虫を取りきることは難しいため、厚生労働省では下記の方法を推奨しています。
下処理の方法
加熱処理:60℃では1分以上、70℃以上では瞬時に死滅。
凍結処理:-20℃以下で24時間以上冷凍することが、感染予防に有効。
※シメサバのように食酢で処理しても、アニサキス幼虫は死にません。
一般的な料理で使う程度の塩・わさびなどの薬味でも、幼虫は死にません。必ず加熱か凍結処理をしましょう。
クドア・セプテンプンクタータ
厚生労働省では、下記の処理を推奨しています。この処理で病原性が失われるため、一度冷凍してから食べたり、加熱調理したりすることで食中毒は防止できます。
下処理の方法
加熱処理:75℃で5分以上加熱。
凍結処理:-20℃で4時間以上、-80℃で2時間以上冷凍。
サルコシスティス
内閣府の食品安全委員会では、下記を推奨しています。
下処理の方法
加熱処理:中心まで火がとおるように、充分に加熱。
凍結処理:-20℃(中心温度)で48時間以上、-30℃(中心温度)で36時間以上、-40℃(中心温度)で18時間以上の凍結。
急速冷凍装置を使う場合は、-30℃(中心温度)で18時間以上の凍結。液体窒素を使う場合は、1時間以上ひたす。
トキソプラズマ
内閣府の食品安全委員会では、下記を推奨しています。
下処理の方法
加熱処理:55℃で5分以上加熱。中心が67℃になるまで加熱。
凍結処理:中心が-12℃になるまで凍結。
トリヒナ(旋毛虫症「せんもうちゅうしょう」)
内閣府の食品安全委員会では、加熱処理を推奨しています。トリヒナは冷凍に強く、冷凍しても死滅しないためです。
下処理の方法
加熱処理:ジビエ(クマ、イノシシ等)や豚肉は、中心まで火がとおるよう充分に加熱。
寄生虫は加熱しても死なない?!食中毒防止の対策を知りたいのまとめ
まとめ
- 寄生虫が原因の食中毒を防ぐには、寄生虫やその卵を死滅させる必要がある。
- 寄生虫が原因で、食中毒をおこす可能性がある食材には、生鮮魚介類やジビエ、食肉などがある。
- 食中毒の原因となる寄生虫には、アニサキス、クドア・セプテンクタータ、サルコシスティス、トキソプラズマ、トリヒナなどがいる。
- 寄生虫による食中毒を防ぐには、食材の中心までしっかり加熱することが大事。
- トリヒナは冷凍に強いため、凍結処理では食中毒を防げない。
寄生虫が原因で起こる食中毒や、対策について紹介しました。専門店の味を家庭でも楽しめるようになったのは良いことですが、自分で調理する場合は、さまざまな注意が必要です。
専門業者がきちんと加工した生食用のもの以外は、生食は避けて、しっかり中まで加熱して食べましょう。
寄生虫による食中毒は、ちょっとした注意で防ぐことができます。でも食後、少しでも体調に不安を感じたら、すぐに病院受診してくださいね。