手紙や招待状などでたびたび見かける「吉日」という表現。
普段はあまり気に留めない表現ですが、
皆さんはその意味や使い方を正しく説明できますか?
今回は「吉日」の意味や使える場面、ふさわしくない場面について解説します。
大人の教養としてぜひその使い方を知っておきましょう!
「吉日」の手紙での意味は?本来の意味と少し違う?
「吉日」っていつのこと?本来の意味は?
そもそも「吉日」とはいつを指しているんでしょうか?
本来の言葉の意味は以下の通りです。
縁起のよい日。祝い事など、何か事をするのによいとされる日。きちにち。きつじつ。「思い立ったが吉日」⇔凶日(きょうじつ)。
(後略)
引用:Weblio辞書
ここで言う「縁起の良い日」は、暦に割り当てられた六曜で決まっています。
六曜は中国の占いから生まれたもので、「大安」「仏滅」「友引」などは私たちにも馴染みのあるものですよね。
また、六曜とは別に「一粒万倍日」「天赦日」などの特に縁起の良い日も存在し、昔から婚礼や開店、建築などで重視されてきました。
普段の生活で、宝くじやお財布を買うときに参考にする人もいるのではないでしょうか。
このように、通常「吉日」というと暦に割り当てられた特定の日を指します。
「吉日」が手紙で使われるときの意味は?
ところが、手紙での「吉日」は少しだけ違う使われ方をします。
「良い日取り」という意味合いに変わりありませんが、実務上日付を曖昧にする目的でも使われるんです。
というのも、招待状やお知らせを出す際は、複数の人に出すケースがほとんど。
日付を入れた文書を作成しても、たくさんの人に発送すると届くまでに時間がかかることもありますよね。
そんなときに「吉日」という表現にしておけば縁起が良い上に日付もぼかせるという、一石二鳥のフレーズなんです。
ここでの「吉日」は、カレンダー上での「縁起の良い日」ということではありません。
「吉日」と書いたからといって、カレンダーで暦を確認して書き始めるわけではありませんよね。
発送する日を確認するわけでもなければ、ましてや郵送であれば相手が受け取る日にちはこちらではわかりません。
あくまで「佳き日」という曖昧な表現です。
表向きはおめでたい文書にふさわしい表現で、なおかつ実務的には日付をぼかせて失礼にならない、
という点で便利なのが「吉日」という言葉なんです。
「吉日」の手紙での使い方!使える場面と使えない場面は?
「吉日」の手紙での使い方
では「吉日」の使い方を見ていきましょう。
一番よく見る使い方が「〇年〇月吉日」ですよね。
この〇年は和暦であることが多いですが西暦でも問題はありません。
ただ、昔からある表現のため特に年配の方などは違和感を覚えるかもしれません。
幅広い世代によりしっくり来るのは和暦と言えそうです。
日付の代わりに使うものなので、例えば横書きなら上部や文末に入れればOKですよ。
「吉日」を手紙で使える場面
「吉日」が使えるのは、簡単に言うとポジティブな場面です。
・婚礼(挙式や披露宴)の招待状
・誕生日、還暦、米寿などを祝う会の案内
・建築(地鎮祭、建前、上棟式など)の案内
・創立記念日、懇親会
・回覧文書
上記のような場面で使うことができます。
懇親会などは特にお祝い事というわけではないですが、ポジティブな内容なので吉日としてOKです。
また、回覧文書もネガティブな内容でなければ「吉日」を使っても構いません。
全員の回覧が終わるまでに時間がかかるので、順番が後ろの人が後回しにされた印象を受けることを避けられますよ。
このような場面では「縁起の良い日」という意味合いより、「日付をぼかす」という便利な面が活かされることになります。
上記には入っていませんが、一般的にはセールや優待のお知らせにも「吉日」を使って問題ないとされています。
中には「このセールがあなたにとって良い知らせですよ」という風に押しつけがましくなる、という意見もあるようですが、実際には使われていることも多いシーンのひとつです。
受け取ったところでそこまで気にならないですし、実際多く見かける場面ですよね。
ここで重要なのが、「吉日」が使えるのは「日付が重要でない文書」でもあること。
この後詳しくお伝えしますが、差出日が重要な文書で「吉日」としてしまうと不都合が生じる可能性があります。
反対に、会の日程などを案内する文書であれば差出日は「吉日」としておいた方が、会の日程と混同することを防ぐことができます。
「吉日」を手紙で使えない場面
反対に「吉日」が使えない場面は、大きく分けて2つあります。
1つ目はネガティブな場面です。
・葬儀や会葬礼状、法事などの案内
・お詫びの文書
・閉店などのお知らせ
上記のような場面では「吉日」は使うことができません。
さすがに弔事は吉日ではありませんし、閉店なども悲しいことですよね。
お詫びはネガティブな内容である上に、日付を曖昧にして謝罪するのは失礼にあたると考えられます。
「吉日」が使えるかどうか判断するときにもう1つ大切な視点が、日付が重要な文書かどうかという点です。
ネガティブな内容でなかったとしても、以下のように日付が重要な文書には「吉日」の表現は使えません。
・注文書、納品書、請求書
・報告書
・契約書
・遺言書
ビジネスシーンでは、お祝い事でない限りできるだけ日付を明記しましょう。
のちのち書類の内容を確認するときに「吉日」なんて曖昧な日付の書類では困りますよね。
また、遺言書は日付がないと無効になってしまいます。
書類の要件として日付が必須のものに「吉日」の表現は厳禁です。
必ず具体的な日付を明記しましょう!
「吉日」を手紙で使って大丈夫?こんなときどうする?
「吉日」はお礼状にも使える?
お礼状はポジティブなイメージがありますが「吉日」を使っても良いのでしょうか?
実は、この場合は避けるのがベターなんです。
お礼を伝えるのに日付をぼかしてしまうのはちょっと失礼ですよね。
日付を明記してタイムラグが出ないよう早めにお礼を伝える、というのが一番気持ちが伝わりそうです。
「吉日」は月またぎになっても大丈夫?
手紙で使うときは通常「〇年〇月吉日」と書きますが、相手に届くまでに月をまたいでしまう場合はどうなのでしょうか?
これについては気にしなくて大丈夫です。
文書の作成から配達までタイムラグが生じるのは当然のこと。
受け取った相手もそのことで気にしたり怒ったりということは考えにくいでしょう。
とは言え、2月末に届いたものの日付が1月吉日となると1ヵ月近く間隔が空いているので、空きすぎないことが望ましいですね。
手紙の「吉日」の英語表現はある?
ビジネスで英語圏の方と文書のやりとりをされる方もいらっしゃるでしょう。
英語には日本の「吉日」にあたる表現はあるのでしょうか?
実は、英語にはこのような表現はないんです。
「吉日」は婉曲的な言い方をする日本語ならではの表現なんですね。
単純に年月だけを英語で表現しようとすると
"in June 2021"(2021年6月)
という風になります。
ただし、英語の文書で日付をぼかす場面はあまりないので、実際は日付までを表記した
"June1,2021"(2021年6月1日)
といった表現をするのが一般的です。
どうしても縁起の良い表現にしたい場合は、強いて英語に置き換えるのであれば
”a fine day June.2021”(2021年6月の良い日)
といった表現が近そうです。
「吉日」の手紙での使い方は?意味を知れば使える場面が分かる!まとめ
ここまで「吉日」の意味と使い方を紹介してきました。
よく見る表現でも意外と説明できないものなので、大人の教養として知っておきたいものですね。
判断に迷うときは「ネガティブな内容ではないか?」「日付が必要な書類ではないか?」を考えてみるようにしましょう。
加えてもう1つ考える必要があるのが「相手に失礼がないか?」ということ。
ポジティブな表現も使うシーンを間違えると失礼にあたるものです。
相手の立場に立って上手に手紙を書けるようになりたいですね!