すらっと細く黒い体に、ひらひらと飛ぶ姿が幻想的なハグロトンボ。
初めて目にする際には、誰でもつい目を奪われてしまうことでしょう。
「捕まえてみたい」と思う方も居るかもしれませんが、ちょっと待ってください。
ハグロトンボは捕まえてはいけない、追いかけてもいけないと言われるトンボなのです。
ハグロトンボの寿命は成虫では2~3ヶ月。ヤゴの状態で1~2年と言われます。
意外と長い、と思われましたか?
でも、トンボはあたりを飛び回り動く獲物を捕まえる昆虫なので、カブトムシやクワガタのように虫かごで育てるのはちょっと難しいです。
育ててみたいというお子さんにはヤゴを見つけてあげると良いかもしれませんね。
その他にも、ハグロトンボには捕まえてはいけないと言われる理由があるのです。
黒いトンボを捕まえてはいけない理由①種類や寿命・基本情報
トンボ目・カワトンボ科・アオハダトンボ属に属するハグロトンボ。
体長は57~67mm、オスよりもメスのほうが少し大きいです。
オスは緑がかった光沢のある美しい外見をしており、メスは光沢のない黒褐色の外見をしています。
ここで上の写真をご覧ください。
このハグロトンボはオスかメスかおわかりですか?
正解は……そう、オスです!
腹と言われる細長い部分がとっても綺麗なエメラルドグリーンに輝いていますよね。
ハグロトンボの寿命は成虫では2~3ヶ月。ヤゴの状態で1~2年です。
成虫は春から秋にかけて見ることができ、ヤゴの状態で冬を越します。
ハグロトンボは日本では本州、四国、九州と広く分布しており、特に河川や用水路付近で見つけることができますが、たまに住宅地でも見つけることができますよ。
ハグロトンボは絶滅危惧種? 原因は生息域の減少
ハグロトンボについて調べていると、絶滅危惧種に指定されているという情報もありました。
実際にレッドデータ検索システムで検索してみると、2023年11月視点では、東京では絶滅危惧Ⅱ類に、神奈川では要注目種、青森では希少野生生物Cランクになっていました。
個体数が減少しているのは、環境破壊などによって生息できる環境が少なくなっていることが原因です。
これはハグロトンボに限らず、どんな生き物にも当てはまることですね。
ハグロトンボはチョウのようにひらひらと飛ぶ姿が特徴的で、他のトンボと違って高速で移動しないため捕まえやすい品種です。
個人的な印象ですが、よく道路で轢かれているところも目にするので、逃げ足が速くないということはそれだけ絶滅の危機に瀕しやすい種なのだと思います。
これから先100年200年後にもこの美しいトンボを伝えていくためには、豊かな自然環境を残していくことはもちろん、ハグロトンボを捕まえてはいけないのです。
黒いトンボを捕まえてはいけない理由②ハグロトンボの生態
ハグロトンボの成虫は5~10月にかけて見つけることができます。
他のトンボと比べると1ヶ月ほど長い期間成虫を見ることができるのが特徴です。
ハグロトンボは植物の茂る水辺で葉に留まって交尾をし、藻や草に産卵します。
卵の期間は2~3週間で、孵化してからはヤゴと呼ばれる幼虫の姿で越冬します。
幼虫期感は1~2年と言われ、トンボの中では長い部類です。
そのためヤゴは1年を通して見つけることが出来ますが、前年のヤゴも残っているから秋には特に見つかりやすいのですね。
春~夏の間に羽化し、羽化したての若い個体はしばらく水辺を離れて薄暗い林の中で生活します。
成熟した個体がまた水辺へ戻ってきて交尾をし、次の世代へ命を繋ぐのですね。
ハグロトンボを飼育するなら、ヤゴがおすすめ!
ハグロトンボのヤゴはよく見るヤゴと比べると、細長い外見をしており、3cm程と少し大きくなります。
ヤゴは肉食でアカムシやミミズ、ミジンコやオタマジャクシなどの生餌を食べるため、メダカを飼育している方にとっては天敵とも言われますね。
でも実は、トンボを飼育したいと思っている方にはヤゴがおすすめです。
ヤゴのエサのアカムシやミジンコは熱帯魚ショップで購入することができるんです。
基本は生餌しか食べないのですが、冷凍のアカムシを解凍してピンセットで摘み、ヤゴの目の前で生きているようにゆらゆらしてあげると食べてくれますよ。
無事成虫になったら、自然へ還してあげましょう。
ハグロトンボの成虫を飼育するのは難しい
ハグロトンボの成虫期間は2~3ヶ月と短いです。
トンボは空中を飛び回り、ハエや蚊やアブなどの飛んでいる虫を捕まえて食べます。
常に生きた虫を用意しておくのも大変ですが、仮にあなたが生きたハエや蚊を捕まえて虫かごへ入れてやったとしても、トンボが十分に飛び回るスペースを確保することは難しいでしょう。
またトンボは幼虫の頃から人や農作物に害をなす虫を捕食してくれるため、益虫に分類されます。
最近ではオニヤンマのブローチを付けていると、他の虫が怖がって寄り付かないので、虫除けに効果があるなんて言われますよね。
害虫を食べてくれれば豊作が期待できることから、トンボは富の象徴と言われたり、縁起がいいと考えられているんです。
農家の方にとってもトンボはありがたい存在なので、捕まえてはいけない虫なのです。
黒いトンボを捕まえてはいけない理由③ハグロトンボの名前の由来
ハグロトンボの「ハグロ」は実は羽が黒いという意味ではありません。
日本でも古くから行われていた「お歯黒」という化粧法が名前の由来と言われています。
私の住んでいる中国地方ではまさに「オハグロトンボ」という呼び方をしますが、その他にも「極楽トンボ」「神様トンボ」「ホソボソトンボ」など、日本各地で様々な呼び方をされています。
「神様トンボ」というのは、ハグロトンボが羽を閉じたり開いたりする姿が神様へ合掌しているように見えるということが名前の由来だそうです。
他にもお盆によく姿を見かけることから、ご先祖様の魂を導く存在だから捕まえてはいけない、追いかけてもいけない「神様トンボ」として伝えられたのだとか。
またトンボは前へ進んで後退しないことから、戦などで勝利を呼び込む「勝ち虫」として、古くから日本人に好まれてきました。
ご先祖様を導く存在、神様の使い、勝利に向かって突き進む象徴……その前進を止めないためにも、トンボは捕まえてはいけないと言われているのですね。
黒いトンボの寿命は? ハグロトンボを捕まえてはいけない3つの理由のまとめ
ここではハグロトンボを捕まえてはいけない3つの理由を説明してきました。
簡単にまとめると以下の通りでしたね。
- 生活環境の減少により個体数を減らしている絶滅危惧種だから捕まえてはいけない。
- 成虫は寿命も短く、飼育に適した虫ではないから捕まえてはいけない。
- 神様・ご先祖様の使いであり、縁起のいい存在だから捕まえてはいけない。
また黒いトンボに限らず、トンボは元々「富の象徴」「勝ち虫」と呼ばれるなど、縁起が良い存在として日本人に親しまれている虫でした。
これからトンボを見かけた時には、なんだか特別な虫を見ているようでラッキーな気持ちになれそうです。
皆さんもハグロトンボを見かけた際には、捕まえたりせずに優しく見守ってくださいね。