2016年1月からスタートした「マイナンバー(個人番号)カード」の、2021年8月の時点での普及率は、全人口比36%でした。
総務省が人気タレントを起用して「マイナンバーカードがこの先必要不可欠になる」と、CMで流しているのもよく見かけますね。
しかし手続きが面倒だったりして、あまり普及していないと印象を受けます。
国からはメリットしか聞くことがないマイナンバーカードですが、デメリットについてはどうなんでしょうか?
今回の記事では、マイナンバーと電子証明書の違いや、そのデメリットについて解説していきます。
マイナンバーカードと通知カードとの違いと電子証明書のデメリット
まずマイナンバーカードとは何なのか、復習しておきましょう。
マイナンバーカードは、個人ごとにマイナンバーが割り振られ、顔写真とICチップが付いているプラスチック製カードです。
カード自体が身分証明書として利用でき、ICチップには電子証明書の機能が入っているので、各種サービスに利用できます。
マイナンバーカードと通知カードの違い
マイナンバーカードと間違えやすいのが「通知カード」です。マイナンバーを通知するためだけで、身分証明書としては利用できません。
マイナンバーカードを発行するのに必要ですが、マイナンバーカードを発行したら通知カードは返納することになっています。
マイナンバーカードの電子証明書機能とは
「電子証明書機能」とは、公的個人認証サービスとして信頼できる認証局が、本人であることを電子的に証明してくれるものです。
不動産取引では印鑑証明が必要になりますが、電子証明書とはその印鑑証明書に匹敵します。
「電子証明書」のデータは、外部から読み取られる恐れのないマイナンバーカードなどのICカードに記録することで、利用できるようになります。
電子証明書の種類
①署名用電子証明書
②利用者証明用電子証明書
「署名用電子証明書」には、氏名・住所・生年月日・性別の4つの情報が記載されているので、e-Tax(国税電子申請・納税システム)での電子申請時や、民間のオンライン取引に利用できます。
「利用者証明用電子証明書」は、コンビニでの交付(住民票や印鑑登録証明書)を取得する時や、民間サイトへのログイン時に利用できます。
マイナンバーカードでは、発行申請時に電子証明書を希望しない場合のみ、電子証明書機能が付かないので、普通はそのままの人が多いでしょう。
つまりマイナンバーカードを持っていても、電子証明書が付いてなければ、各種サービスが利用できないというわけです。
マイナンバーカードの電子証明書によるデメリット
そんなマイナンバーの電子証明書について、あまりデメリットを聞くことがないのですが、考えられるデメリットは次の4つになります。
電子証明書のデメリット
①情報流出の可能性
②監視社会への可能性
③なりすまし被害の可能性
④銀行口座に紐づけされる可能性
本当にこんな事が起こりうるのか、そのデメリットについて順に説明していきます。
マイナンバーの電子証明書デメリット①情報流出の可能性
マイナンバーには社会保障・税・災害対策で使用するために、個人のあらゆる情報が詰まっています。
医療分野や金融にも利用できるように国は進めていますが、そのデメリットの①として「情報流出の可能性がある」という問題があります。
その対策として、特定個人情報を特定の機関に集約する「一元管理」方法ではなく、各機関がそれぞれの個人情報を管理し、必要ならば情報の連係を行う「分散管理」方法が採用されています。
万が一、どこかの機関で特定個人情報が流出した場合でも、その被害が食い止められるようにすることで、このデメリットの対策としています。
しかし残念ながら、不正アクセスやサーバー攻撃などで、一部の情報流出は起こっているのが現状です。
マイナンバーの電子証明書デメリット②監視社会への可能性
デメリット②としては「監視社会への可能性」ですが、他国にもマイナンバー制度を活用している国があります。
その一つ中国では、個人情報の収集によって、様々な行動履歴が点数化されて信用評価を受けています。
つまり個人のスコアが高いと、様々な行政サービスが優先的に受けられる一方で、スコアが低ければ行政サービスが受けられないこともあります。
実際に日本でも、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」にしようという動きがあります。
コロナ特別定額給付金のオンライン申請を行うのに、マイナンバーカードの電子証明書が必要になっていましたね。
マイナンバーカードと、健康保険証・運転免許証と一体化をはかる動きは、確かに生活を便利にするメリットもあるでしょう。
しかし、国による個人情報収集と民間のデータ共有が一致したときには「監視社会」が出現する危険性があるのです。
マイナンバーの電子証明書デメリット③なりすまし被害の可能性
デメリット③としては「なりすまし詐欺の可能性」のことです。
例えばマイナンバー制度は、アメリカでも存在し「社会保障番号」と呼ばれています。
アメリカでは、その社会保障番号自体が身分証明書として用いられていますが、そのためのなりすまし被害も少なくありません。
実際2015年の5月に、アメリカで1万3千人分、3900万ドル(約47億円)の税金還付金詐欺が発覚して「なりすまし」は大きな社会問題となっています。
その原因は、社会保障番号を口頭で伝えるだけで本人認証になっていたからです。
日本のマイナンバー制度においては、その反省を活かし、マイナンバーを口頭で伝える本人認証は行いません。
本人認証が必要な場合には、運転免許証などの顔写真付き身分証明書と2段階で、本人確認を行うことが法律に厳格に規定されています。
よって日本のマイナンバー制度では、なりすまし被害が発生する可能性は低いといわれています。
しかし、盗難や紛失におけるリスクには注意しなければなりません。運転免許証やクレジットカードなどと同じように気をつけて管理する必要はあります。
マイナンバーの電子証明書デメリット④銀行口座が紐づけされる可能性
2020年の、全国民1人10万円の一律給付金の時に、マイナンバーカードと銀行口座との紐づけを義務化する法案が検討されました。
給付金はオンライン申請もできたのですが、申請時にはマイナンバーカードが必要でした。
しかしマイナンバーカードと銀行口座情報が紐づけられていなかったので、オンライン申請をした人の方が受給が遅れたのです。
そのため、マイナンバーカードと銀行口座を紐づけする動きもありましたが、今のところ義務化にはなっていません。
マイナンバーカードと銀行口座が紐付けされても、国が資産を管理できるわけではありませんが、脱税はできなくなるでしょうね。
マイナンバーカードの電子証明書によるメリット
これまでマイナンバーカードを持つデメリットについて書いてきましたが、メリットについても触れておきます。
電子証明書が付いていることで、便利になることも増えるようです。
マイナンバーカードのメリット
①身分証明書の代わりになる
②各種行政手続のオンライン申請
③自宅で確定申告が可能
④マイナポータルやマイナポイント、自治体ポイントの利用
では順に説明していきます。
身分証明書の代わりになる
運転免許証を返還した高齢者や、未成年者にとって、本人確認する際に写真付きの身分証明書になるのがマイナンバーカードといえます。
特に高齢者は、介護保険のサービスを利用する機会が増えるでしょう。介護認定をはじめ、更新、区分変更など、様々な手続きで本人確認が必要になります。
現時点では使用分野が限られていますが、今後は保険証として利用できたり、図書館の貸し出しカードにもなる可能性があります。
これまでは各サービスごとにカードを発行しなければいけなかったのが、マイナンバーカードだけで済めば、サービスごとに登録する手間も省けますね。
各種行政手続きのオンライン申請
コンビニ店舗に設置されているマルチコピー機から、住民票の写しや印鑑証明書などを入手できます。
役所は夕方までしか開いてないですが、コンビニなら遅い時間まで入手できますね。
また書面で申請するしかなかった各種行政書類を、オンラインで申請することが可能になりました。
自宅で確定申告ができる
「e-Tax」という電子申告を利用すれば、自宅で確定申告が可能になります。マイナンバーによって添付書類の省略ができるようになるからです。
そのためには、パソコンでe-Taxを利用できる環境を整える必要はありますが、これから増える方法ではないでしょうか。
マイナポータルやマイナポイント、自治体ポイントの利用
マイナポータルとは、行政手続きについて検索や申請を行える自分専用のサイトです。
予防接種の履歴などが確認できるほか、保育園の入所の際に必要な就労証明書の作成や、法人設立のための手続きにも利用できます。
またマイナポイントとは、マイナンバーカードを発行することで民間の電子マネーやプリペイドカードのポイントが最大5,000円分還元されるキャンペーンです。
還元期間は2021年3月31日まででしたが、半年間延長されて2021年9月30日までとなりました。
ただし、対象となるのは2021年3月末までにマイナンバーカードを申請した人となります。
意外な使い方として、マイナンバーカードは、飛行機のマイルなどとID連携することで「自治体ポイント」に交換ができます。
この自治体ポイントは、特産品との交換や地元商店街での買い物に利用できます。
マイナンバーカードの電子証明書にはデメリットが4つ存在するのまとめ
- マイナンバーカードは、個人ごとのマイナンバーと顔写真、ICチップが付いている
- カード自体が身分証明書として利用でき、ICチップには電子証明書の機能が入っている
- 電子証明書の機能をつけないこともできるが、各種サービスの利用が難しくなる
- マイナンバーの電子証明書にはデメリットが4つある
- 情報流出の可能性
- 監視社会への可能性
- なりすまし被害の可能性
- 銀行口座が紐づけされる可能性
- マイナンバーの電子証明書にはメリットが4つある
- 身分証明書の代わりになる
- 各種行政手続のオンライン申請
- 自宅で確定申告が可能
- マイナポータルやマイナポイント、自治体ポイントの利用
今回の記事では、マイナンバーカード電子証明書のデメリットについて説明しました。
デメリットは可能性があるという事なので、理解しておけば必要以上に恐れる事はないと思います。