和装で欠かせない足元のおしゃれですが、和装の際の履物を大きく分けると3種類になります。雪駄、草履、下駄の3つで、
大まかな形は頭の中に浮かぶ人が多いでしょう。それぞれ目的をもって作られている3つの履物のなかで、似ているのは雪駄と草履ですが、
それぞれに細かな違いがあります。違いを知るには、まず草履について理解するのがおすすめです。
雪駄と草履について
草履とは?
草履は日本の履物としてはもっとも多く使われ、伝統的とさえ言っていいものです。多くの人が日常的に使っていた履物で、明治維新のあと、今ではすっかりおなじみとなった靴という洋風の履物が普及するまでは、日本人にとって一番ポピュラーな履物だったといえます。現代においては普段に履くということはほとんどなく、和装の時に履く改まった履物というとらえ方が一般的です。
そもそも着物を着ること自体が特別なことになったため、着物の際の履物として特別視されるようになったのは自然なことと言えます。下駄と比較すると、現代の履物のたとえで言えば、サンダルと革靴ほどの違いがあるといってもおかしくないでしょう。
雪駄とは?
雪駄はどのような履物かというと、竹の皮で作った草履の裏にさらに皮を貼って防水機能を施したものをいいます。
さらに皮底部分には後金と呼ばれる、現代でいうところのプロテクターのようなものがかかとに取り付けられていたことから、
非常に傷みにくく、丈夫に作られているのが特徴です。防水機能を施すことを目的に、裏部分にも皮を貼っているため、
地面と接触する裏部分から湿気を通しにくい履物になっているのが、雪駄の最大の特徴と言えます。
雪駄は全体的に四角く、幅が広いぺたんとした形になっているのが特徴です。足を載せる面積が広ければ広いほど、
底に貼った皮が湿気を通しにくくなるため、足袋や足裏が濡れるのを防いでくれます。見た目ですぐにわかりますが、
四角くて大きめに作られていることから、使用するのは男性に限定されます。浴衣姿の際の履物として、一番人気といっていいでしょう。
では、女性の足元の湿気対策はどうすればいいかというと、つま先部分に防水ガードのカバーがついた草履を履くことになります。
透明なカバーが取り付けられていますので、見た目の美しさを損なうことなく履けることから、女性にはこの選択肢がベストです。
男性が雪駄を履くときはたいてい浴衣姿で、その姿は粋だとして女性から注目されることが少なくありませんが、
実は江戸時代でもその姿は粋なものだとされていました。その理由は、かかとに取り付けられたプロテクターとなる金具の存在です。
これが、歩くたびにチャラと音を立てるのです。下駄はチャッという音に聞こえるのに対して、チャラチャラチャラと聞こえるところが、
江戸の男たちの間で大いに人気を博したとされています。
将軍様のお膝元である江戸で暮らす生粋の江戸っ子たちは、常に粋であることに強いこだわりを持っていたこともあり、
履物の音一つにしても、より粋なものはどれかを比べて選んでいたのは興味深いところです。
男性向けということもあって、履物の底部分にはあまり厚みがないこともあり、慣れない人でも履きやすく、長時間にわたって履いていても
疲れにくいという特徴があります。
現代人にとっては、どちらもめったに掃く機会がない履物であることに違いはなく、
そのため、何がどう違うのか分からずに購入してしまうこともあるかもしれません。
見極めるには女性ものであるのか、それとも男性ものであるのかを見比べるのがもっともわかりやすいでしょう。
さらに、底部分の厚みにも注目します。女性ものは履く面積が細身で狭く、エレガントな印象に仕上がっている上、
かなり厚めの底に仕上げられたものが人気です。女性にとっては厚底の履物は、普段からヒールやパンプスなどで履き慣れているということもあり、
和装姿になったときでもヒール部分にこだわる人が多いのが、人気の理由になっていそうです。
夏になると、浴衣を着て出かけるイベントも多くなりますので、カップルであれば一緒に出掛けられるような浴衣を、
足元まで含めてしっかり吟味して購入したいものです。その際、履物の違いをしっかりと理解していれば、
男性も女性も何を基準にして探せばいいかがよくわかります。雨の日でも外出するつもりなのであれば、
雨対策が可能な履物を選ぶ必要がありますし、雨が降った時は浴衣デートは中止にするというのであれば、雨対策を考えることなく選ぶことができます。
靴と比較すると、当然のことながら露出している部分が多いので通気性はよさそうに見えますが、外部からの水に弱いのは確かです。
この点を考慮するならば、水対策の加工が施されているものとそうでないものを、最低でも一足ずつは用意しておいた方がいいでしょう。
履物の種類によって使用用途や、履くのに適した性別が違うということも、間違って選ぶミスを避けるには知っておきたい知識です。
きちんと知っていれば、適した履物を堂々と、そして粋に履きこなすことができるといえます。