カレンダーに小さく書かれている「大安」や「吉日」。大安だから日がいいとか、仏滅だからだめだとか、家族や親類から言われた経験がある人もいるかもしれません。
結婚や葬式などの冠婚葬祭の時や大きな買い物の車の納車日など、人生の一大イベントの時ほど、気にしないとは思いつつも、ちょっと気になる。
そんな大安や吉日について、本当のところはどうなのか調べてみました。
大安(たいあん)は吉日のひとつ!どんな意味があるの?
大安がどんな意味なのか、なんとなくいい日のイメージはあるけれど、はっきりとわかる人は多くはないでしょう。そこで、まずは大安の意味から確認していきます。
そもそも大安の意味ってなに?
大安は、六曜(ろくよう)という日にちや時刻の吉凶を示す事項の中の一つです。六つある曜のうち一番縁起がいい日とされています。
「大いに安らかでいられる日」という意味から、結婚や結納、建物の着工や引渡、自動車の納車などをこの日にするとよいと考えられています。
どれも人生の大きなイベント事ですから、とどこおりなく、やりたいですよね。
吉日の中でも一番メジャーな存在ではないでしょうか。新しい靴は大安におろすとか、新しいことは大安にはじめるという話を聞いたこともあります。
六曜の中の一つだから約6日に1回は大安があります。これを多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれ。大安の日数は、年間60日くらい、月間およそ5日あります。
大安がレアな日だと感じるのは、私たちが日常で使う七曜(日曜から土曜)と組み合わせた時に、大安の土日が月に1回程度で、結構少ないからかもしれません。
六曜ってどんな意味があるの?
六曜(ろくよう)は中国由来の占いのようなもので、日本には鎌倉時代に伝来しました。
実際に広く知れ渡ったのは幕末以降で、その後名称や順序などが変化していきながら現在のような形になっています。
六曜という呼び名は七曜と紛らわしいという理由から明治時代に六輝という呼び名がついたので、併記されてることも多いです。
今回は古くからある「六曜」という方でお話しをしますね。
六曜には他に仏滅など五つの曜があり、大安と合わせて六つの曜があります。それぞれの曜には吉凶が決められていて、その日の中でもいい時間よくない時間があります。
先勝(せんしょう/さきがち)
「先んずれば勝つ」急ぐことが吉とされ、先回りして行動したり、早く事を済ませることがよしとされる日です。
時間は、午前が吉、午後が凶。先手必勝のスタイルってことですね。
友引(ともびき/ゆういん)
もともとは「共引き」で勝負事の決着がつかず引き分けとなるという意味でしたが、やがて転じて「友を引く」日として普及しています。
結婚式などお祝い事には吉、お葬式は避けられています。時間は朝と夕方が吉で、昼は凶。
友引がお休みの火葬場もあるようです。引き寄せられるなら良い方へ引き寄せられたい、という心情は分かる気がします。
先負(せんぶ/さきまけ)
「先んずればすなわち負ける」として、争いごとなどを避け、万事に平静に過ごすのがよしとされる日です。
時間は、午前が凶、午後が吉。攻めるよりも守りの日ということですね。
仏滅(ぶつめつ)
万事に凶。もともとは「物滅」という字だったことから、一旦滅びて新たに始まるという意味です。
別れたい人と別れたり悪縁を切って人生を再スタートしたりするのには良い日という考えもあります。葬式や法事はよいですが、婚礼などの祝儀は避ける傾向があります。
そのマイナスの印象を逆手にとって、結婚式場によっては割引があったり特典がついたりすることもあります。気にならない人にとてもお得ですね。
それから、仏という字が使われていたり葬式によいことから仏教と関係があると誤解されがちですが、何にも関係ありません。
大安(たいあん)
万事に吉。何事においても吉で、六曜の中で一番いい日です。この日は凶の時間もないし、やってはいけないこともないです。特に婚礼に良い日です。
大吉のような印象がありますが、「大いに安し」は「とても平穏」という意味なので、ラッキーデーというよりは実は小吉くらいと考えるほうが合っているかもしれません。
赤口(しゃっこう/じゃっこう)
凶日。とくにお祝い事はだめです。赤という字が使われているので、火や刃物に注意が必要な日です。正午は吉。朝夕は凶。凶の日って仏滅だけじゃなかったんですね。
六曜カレンダーを攻略する!
太陽暦になれた私たちには、不思議な並びに見える六曜ですが、実はとてもシンプル。旧暦で見ると一目瞭然です。
日付(旧暦) | 六曜 |
1月1日・7月1日 | 先勝 |
2月1日・8月1日 | 友引 |
3月1日・9月1日 | 先負 |
4月1日・10月1日 | 仏滅 |
5月1日・11月1日 | 大安 |
6月1日・12月1日 | 赤口 |
1月1日に先勝から始まり、2日は友引、3日先負…と順番に割り当てていきます。1月6日に赤口まできたら1月7日にまた先勝に戻り、あとは順番に繰り返すだけ。
そして2月1日になったら一旦リセットして、2月1日友引→2月2日先負…とすすみます。
ときどき同じ曜が連続したりして、何か特別な意味があるのか?と思いますが、実はこんなしくみになってたんですね。
六曜に信ぴょう性はあるのか?!そこには意外な歴史が
実は、明治になる前はあまり使われていない存在でした。なぜ明治に入ってから広く普及したのでしょうか?
江戸時代は各地で様々な暦が使われましたが、土台になっているのは月の満ち欠けによる太陰暦でした。
近代化をすすめたい明治政府は、西洋で使われる太陽暦に明治6年に変更しました。
十分な準備もなかったので、明治5年12月3日が明治6年1月1日になるという、とんでもないワープがおきます。現代ではちょっと想像できませんが、実際にあった話です。
その時に、吉凶とかただの迷信で近代化の邪魔になるから暦に載せちゃダメ、政府が認めた官暦(神宮暦)以外は認めないよ、と暦注の禁止を明治政府は決めます。
庶民からすれば、突然太陰暦から太陽暦にされ、1か月くらいワープさせられ、とてもわかりにくい。農作業や漁業の目安だった八十八夜や入梅などの雑節もない。
そこで、雑節や吉凶情報満載のオバケ暦と呼ばれた民間暦が出回ります。
この中にある暦注が農作業や伝統行事などの日程を決める大事な情報ですから、庶民には必要でした。取り締まりもありましたが、それもかいくぐり普及していきました。
そんなこんなで昭和になり、戦争による紙不足でオバケ暦は出回らなくなり、終戦をむかえます。そして、誰もが自由にカレンダーが発行できるようになります。
官暦だった神宮暦も数ある暦の中の一つの暦になり、そこには旧暦や六曜ものせました。それほど、六曜は明治から昭和の間に普及したのですね。
太陽暦の統一、暦注の禁止がかえって吉凶を示す暦注を広める結果になるなんて、明治政府の皆さんも想像しなかったのではないでしょうか。
科学的裏付けや信ぴょう性はなくても日常にすっかり染みついていたんですね。
大安以外にはどんな吉日があるの?その意味は何?
大安だけじゃなく吉日はもっとあります。それは、六曜とは別に日の吉凶をみる指標があるんです。詳しくみていきましょう。
吉日を決めるのは干支だった?!
六曜以外に日の吉凶をみるよりどころとなるのが日の干支で、実は六曜より古くからあります。干支というと年賀状ですが、1年ごとだけでなく、1日ごとにもあるんですよ。
干支は六十干支(ろくじっかんし)を使います。これは十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせでできています。
十干は、もともと甲(こう)乙(おつ)丙(へい)丁(てい)…と10日のまとまりで日にちを数えるもので、3巡すると1か月になって便利なので広く使われていました。今も契約書とか法律とか正式な文書ではよく見かける字です。
十二支は12か月の月を呼ぶ呼び名です。こちらのほうが年賀状等ででてくるのでなじみがあるかもしれません。
日にちを数える十干と月を数える十二支の60通りの組み合わせで六十干支です。
これが一巡すると人は60歳になり、暦が一巡してまた最初に還るので、60歳は還暦といわれます。
ポイント 十干(じっかん) 甲(きのえ)乙(きのと)丙(ひのえ)丁(ひのと)戊(つちのえ) 己(つちのと)庚(かのえ)辛(かのと)壬(みずのえ)癸(みずのと) 十二支(じゅうにし) 子(ね)丑(うし)寅(とら)卯(う)辰(たつ)巳(み) 午(うま)未(ひつじ)申(さる)酉(とり)戌(いぬ)亥(い)
一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)
この日に種まきをすると一粒の種が万倍にも実り豊作になるという日です。
何を始めるのにもよい日で、1年に60日くらいあります。ただ、借金などの悪いものも増えてしまうので、そこは要注意です。
二十四節気とそれぞれの日に割り当てられた干支をもとに決められています。
二十四節気は、四季をそれぞれ6つにわけ、約2週間単位でかわります。冬至や夏至、春分や秋分などよく使われていますね。
立春~雨水~啓蟄前日 | 2/3~3/4頃 | 丑と午の日 |
啓蟄~春分~清明前日 | 3/5~4/4頃 | 酉と寅の日 |
清明~穀雨~立夏前日 | 4/5~5/4頃 | 子と卯の日 |
立夏~小満~芒種前日 | 5/5~6/4頃 | 卯と辰の日 |
芒種~夏至~小暑前日 | 6/5~7/6頃 | 巳と午の日 |
小暑~大暑~立秋前日 | 7/7~8/6頃 | 酉と午の日 |
立秋~処暑~白露前日 | 8/7~9/6頃 | 子と未の日 |
白露~秋分~寒露前日 | 9/7~10/7頃 | 卯と申の日 |
寒露~霜降~立冬前日 | 10/8~11/6頃 | 午と酉の日 |
立冬~小雪~大雪前日 | 11/7~12/6頃 | 酉と戌の日 |
大雪~冬至~小寒前日 | 12/7~1/4頃 | 子と亥の日 |
小寒~大寒~立春前日 | 1/5~2/3頃 | 子と卯の日 |
天赦日(てんしゃにち)
神々が天に集まり、すべてのものを赦す大吉日とされています。ほかの日取りが悪くても天赦日なら問題ないとされ、1年に5日くらいあります。
立春から立夏 | 戊寅(つちのえとら)の日 |
立夏から立秋 | 甲午(きのえうま)の日 |
立秋から立冬 | 戊申(つちのえさる)の日 |
立冬から立春 | 甲子(きのえね)の日 |
天恩日(てんおんにち)
天からの恩恵を人々が受けるのでお祝い事に大吉の日です。甲子(きのえね)己卯(つちのとう)己酉(つちのととり)から数えて5日間が天恩日です。
5日連続するので、天恩日はわりと多くあって、1年のうち90日くらいあります。
母倉日(ぼそうにち)
天が母のように人々をいつくしむ日という意味で何事においても吉日です。特に入籍や結婚式に良い日です。
月によって日が決まっていますが、月によってだいぶ日数が違います。ほとんどの月は月に5日くらいですが、7月8月だけ多くて10日くらいあります。
1月・2月 | 子の日と亥の日 |
3月・6月・9月・12月 | 巳の日と午の日 |
4月・5月 | 寅の日と卯の日 |
7月・8月 | 丑の日と辰の日と未の日と戌の日 |
10月・11月 | 申の日と酉の日 |
大明日(だいみょうにち)
天から太陽の恩恵を受けられる日という意味ですべてのことに吉日です。大明日も日の干支によって決まっていて、19の干支が大明日です。
六十干支の60のうちの19ですから、60日のうちの19日、年間で120日くらいで、一番多い吉日ですね。
大明日
甲辰(きのえたつ)・甲申(きのえさる)
乙未(きのとひつじ)・乙丑(きのとうし)
丙辰(ひのえたつ)・丙午(ひのえうま)
丁卯(ひのとう)・丁未(ひのとひつじ)
戊辰(つちのえたつ)
己卯(つちのとう)・己酉(つちのととり)
庚戌(かのえいぬ)
辛未(かのとひつじ)・辛酉(かのととり)・辛亥(かのとい)
壬午(みずのえうま)・壬申(みずのえさる)
癸巳(みずのとみ)・癸酉(みずのととり)
大安や吉日の意味って?信ぴょう性は?読み方には法則がある!?まとめ
・吉日はこんなにある
大安(出現率約6日に1日)
一粒万倍日(出現率約6日に1日)
天赦日(出現率年に5日)
天恩日(出現率約4日に1日)
母倉日(出現率約6日に1日)
大明日(出現率約3日に1日)
・吉日の多くは六曜or干支でだいたい決まる
・六曜や干支に科学的根拠はない
吉日もたくさんありますね。ここまできたら、毎日何かしらの吉日になっていそうな感じがします。
凶日と吉日が重なったときに何を優先するかはその人次第だし、時と場合によって変わりますね。
吉日の根拠は干支か六曜か、背景を知るとシンプルかつ科学的根拠はありません。あとは、本人がどれだけ気にするか?です。
また、結婚や関係者がいるようなイベントの時は、ゲストの方がどれくらい気にするかにもよりますね。
実際にかかわる人へ気配りをしつつ、吉日は何かをするときに背中を押してくれるものとして上手に利用してくださいね。