和室などに多い土壁は和の象徴のようで風情がありますよね。
そんな土壁ですから、最近また人気が出てきているようですね。
ですが、現代建築では土壁はカビが発生しやすいと言われていることをご存じですか?
今回は、土壁にカビが発生する原因や自分でできる除去方法についても紹介していきたいと思います。
土壁にカビができる?!カビが発生する原因は3つ!
以前はカビが発生しにくいと言われていた土壁ですが、現代建築ではカビが発生しやすいそうです。
土壁にカビが発生しやすい原因はなんでしょうか?
土壁にカビが発生しやすい原因は3つあります。
- 吸湿効果により水分をため込んでしまう
- 汚れやほこりが落ちにくい
- 天然素材を使っている
土壁にカビが生える原因①:吸湿効果により水分をため込んでしまう
土壁には調湿機能があります。調湿機能というのは、湿度を一定に保つ機能のことです。
土壁には、室内の湿度が高い時には湿気を吸い込み、室内の湿度が低い時には湿気を放出して部屋の湿度を一定に保つ働きがあるんです。
昔の日本家屋では、室内で吸い込んだ湿気を外に出すことが当たり前に行われていました。
しかし、現代建築ではコンクリートなど調湿機能がない素材を使った建築の一部に土壁が使われている場合が多くあります。
そのような場合は、土壁が吸い込んだ湿気を吐き出すことができずにため込んでしまいます。
土壁はカビの好む水分を蓄えやすい環境にあるのです。
土壁にカビが生える原因②:汚れやほこりが落ちにくい
土壁は、通常の壁紙などと比べると、静電気が発生しない分ほこりはつきにくくなっています。
しかし、土壁は表面がザラザラしています。
そのため、一度ほこりや汚れがついてしまうとデコボコに入り込んでしまって、ほこりや汚れが取れにくくなってしまいます。
土壁についたほこりは、ハウスダストや花粉などを絡めてさらに溜め込みます。
また、タバコのヤニは油脂なので、室内に喫煙者の方がいる場合はヤニが壁のざらざらに入り込んで汚れを吸着してしまいます。
この土壁についたハウスダストや花粉、タバコのヤニなどは、すべてカビを成長させる栄養になるのです。
土壁にカビが生える原因③:天然素材を使っている
土壁は、土や藁、海藻などの天然素材を使っているため、もともとカビにとっての栄養が豊富に含まれている状態になります。
また、乾燥させた藁や土の中に死骸が残っていることもあります。
そのため、もともと栄養が豊富にある素材を使っているところに、湿度や温度などの環境が整うと、カビは一気に発生してしまうのです。
土壁のカビは自分で除去できる?!土壁のカビを除去する方法を紹介します!
土壁の表面や内部の浅い部分に発生したカビであれば、自分で土壁のカビを除去することができます。
それでは、カビの侵食度の目安とカビの除去方法をまとめました。
土壁の表面にできたカビ
土壁の表面にできたカビは、エチルアルコール系除菌剤で除去することができます。
エチルアルコール系の除菌剤は、揮発が早いので、土壁に吹き付けても土壁を水に濡らすことはありません。
アルコールがカビの細胞膜を破壊してタンパク質を溶かすので、簡単に土壁のカビを除去することができるんです。
エチルアルコール系除菌剤の使用ポイント
- 清潔な布にエチルアルコールを染み込ませる
- 手早くカビを拭き取る
- 布の同じ面を何度も使用しない
エチルアルコール系除菌剤は下記のものがあります。
無水エタノール | 消毒用エタノール |
引用:アスクル |
引用:Amazon |
土壁の内部まで侵食しているカビ
土壁の表面についたカビをエチルアルコール系除菌剤で除去しても、カビの色素が残ってしまっている場合があります。
その場合は、カビの色素を除去するために塩素系のカビ取り剤を使用してください。
塩素系のカビ取り剤はアルカリ性のため、酸性のカビの細胞を破壊して死滅させることができるんです。
カビ取り剤は、すぐに揮発してしまうエチルアルコール系除菌剤よりも土壁の内部まで時間をかけて染み込みます。
そのため、残ってしまったカビの色素を取り除くことができます。
しかし、使用後に水洗いが必要だったり、カビを分解した後に水になって残ることがあるります。
そうすると、土壁の色が変わってしまったりカビがひどくなってしまうことがあります。
そのため、土壁のカビの色素を取るには、土壁を傷めない塩素系のカビ取り剤を使う必要があります。
土壁に使える塩素系カビ取り剤のポイントは、以下の2点です。
- 水洗い不要であること
- 非イオン界面活性剤を使っていること
この2点を満たすカビ取り剤は以下のようなものがあります。
純閃堂カビ取り侍液スプレー | カビホワイト |
引用:純閃堂 |
引用:Amazon |
土壁のカビの侵食度の目安
土壁の表面に発生しているカビなのか、内部まで侵食しているカビなのかによって、エチルアルコール系除菌剤や塩素系カビ取り剤など、使う薬剤が異なります。
みなさんはどうやってカビの侵食度を判断すればいいのかわかりますか?
土壁のカビの侵食度は次のような基準で判断ができます。
土壁のカビの侵食度判断のポイント
- 土壁の表面だけにカビが発生している場合:土壁を拭いただけでカビが取れる
- 土壁の表面~内部の浅い部分にカビが侵食している:土壁のカビは取れるが色が残る
- 土壁の内部深くまでカビが侵食している:触れただけで土壁が崩れる
エチルアルコール系除菌剤で拭き取りをした時に、カビだけが取れるか、土壁そのものが崩れてくるかが目安となります。
エチルアルコール系除菌剤でカビだけが取れるなら、色素を取るために土壁用カビ取り剤を使用しましょう。
ですが、エチルアルコール系除菌剤で土壁が崩れてくるのであれば、カビは土壁の内部にまで侵食している状態となっています。
そのため、土壁用のカビ取り剤を使ってもカビは取りきれず、土壁の強度をさらに弱めてしまう可能性もあります。
土壁が崩れてきてしまった場合には、それ以上のカビ取りは中止しましょう。
土壁の深くまで浸潤しているカビは、自分で取り除くことは不可能です。いまある土壁を剥がして塗り替えるしかありません。
早めに業者に相談し、カビによる健康被害が起きる前に、リフォームや新たな土壁の塗り直しを検討しましょう。
土壁のカビを除去したい!どんなことに気を付ければいいの?
土壁のカビを自分で除去する場合、土壁を傷めないようにするための注意点はなんでしょうか?
自分で土壁のカビを除去するときの注意点は以下の2点です。
- 土壁を水拭きしない
- 土壁を擦らない
土壁のカビを除去するときの注意点①:水拭きしない
土壁は水に弱いです。そのため、水拭きしてしまうとシミができたり、ボロボロと崩れ落ちてしまったり、カビが発生する原因になります。
汚れを拭き取る場合は、水拭きではなくアルコール製剤を含ませた清潔な布で拭き取りをしてください。
土壁のカビを除去するときの注意点②:擦らない
薬剤を土壁に染み込ませようと思うあまり、ブラシなどで強く擦ると土壁が剥がれてしまうことがあります。
薬剤を中まで染み込ませたい場合は、刷毛を使って優しく塗り込むようにしてください。
せっかくの土壁ですので、カビを除去するときにもこの2点に注意して、土壁を傷めないようにしましょう。
土壁のカビ対策!カビの発生を予防する方法は?どうやって掃除をしたらいいの?
カビには温度や湿度など、生育しやすい環境があります。
カビが発生しやすい状況をなくすことで、土壁にカビが発生するのを予防できます。
カビが発生しやすい状況は、以下の3つです。
カビが生育しやすい環境
- カビの好む栄養がある:毛、フケ、ほこり、垢、食品、油脂、花粉、ダニの死骸
- カビの好む湿度である:64~94%
- カビの好む気温である:25~28度(生育自体は0~40度で可能)
カビの好む気温を避けることは難しいため、カビの好む栄養や湿度を避けて、土壁にカビが発生しやすい環境をなくしましょう。
具体的な対策は次の通りです。
土壁のカビ対策①:物をかけない、物を置かない
洋服や和服、鞄などを土壁の長押などに掛けたままにしていると、土壁は吸い込んだ湿気を吐き出せず、水分を蓄えたままになってしまいます。
クローゼット等に入れる前にひと晩かけておく程度なら問題はありませんが、ずっと掛けっぱなしにしていると、土壁にカビが生えやすくなります。
土壁の前にタンスやテレビなど、大きな家具を置いている場合も注意が必要です。
土壁の前に物があると、やはり吸い取った湿気を吐き出すことができなくなり、水分をため込んだままになります。
土壁の長押に掛けているものはできるだけ早く移動させ、大きな家具を置いている場合は、壁から5cmほど離して置くようにしましょう。
土壁のカビ対策②:掃除する
カビの胞子は空気中を漂い、ほこりや汚れがあるとそこに付着します。
そのため土壁にほこりや汚れを溜めないことがカビを予防する上では重要になります。
土壁を汚してしまったら、すぐに掃除するようにしましょう。
土壁の掃除にあたっては、水拭きと強く擦ることは厳禁です。
土壁の掃除のポイントは以下の2つです。
- はたきや手ぼうき、ハンディーモップなどでほこりを払い落とす
- エチルアルコールを含ませた布で汚れを拭き取る
アルコールを使って拭き掃除をすると、たとえカビの胞子が土壁に付着していても繁殖することを抑えられるため、カビは発生しにくくなります。
毎日やる必要はありませんが、汚してしまった場合はなるべく早く汚れを落とすようにしましょう。
土壁のカビ対策③:換気する
カビは湿度の高い環境を好みますが、逆に湿度が60%以下になると育つことができなくなります。
窓のないお部屋に土壁がある場合は、エアコンをつけたり扇風機を回すなどしてこもった空気を入れ替えてください。
また、晴れた日には換気だけでなく自然光を取り込むことで、土壁だけでなく畳や襖まで、まとめて紫外線による除菌ができます。
土壁のカビ対策!土壁をリフォームしたい!方法と費用や工事期間を徹底比較!
土壁は和を感じられるので和室の壁に多く作られています。
風情ある土壁ですから、温かみを感じたり土壁ならではの風合いを感じられて、良い点がたくさんあります。
ですが、劣化が進むとポロポロと剥がれてきてしまったり、カビが発生してしまったりと管理が大変な面もあります。
このように、カビの発生や劣化している場合や、和室を洋室にしたいなどといった場合に、土壁のリフォームを検討される方もいるでしょう。
次の表に、土壁のリフォーム方法による特徴や費用、工事期間をまとめました。
特徴 | 費用(6畳分) | 工事期間 | |
塗り壁 | 土壁の風合いや質感を損なわずにリフォームできるが、手間がかかる。 | 12~19万 | 2~4日 |
クロス | デザインや色が豊富だが、土壁の風合いを生かせない。 | 8~16万 | 1~2日 |
ペンキ | DIY向きで費用は抑えられるが、土壁の風合いを生かせない。 | 6~10万 | 2~4日 |
では一つずつ解説していきます。
土壁をリフォーム①:塗り壁
クロスやペンキと違い表面に小さな穴がたくさん空いていることで調湿性・蓄熱性・脱臭性などのメリットがあります。
塗り壁は、土壁の風合いや質感を損なわずにリフォームできるところがメリットになります。
また、塗り壁ならではのあたたかみはペンキやクロスでは再現できません。
そのため、風合いを生かしながら和の温かみも残したい場合にはお薦めのリフォーム方法です。
しかし、壁を塗る作業は手間がかかりますので、クロスやペンキに比べて費用が高くつく傾向にあります。
塗り壁は種類がたくさんあります。業者さんにもよりますが、土壁のリフォームでは珪藻土や漆喰を勧められることが多いようです。
調湿性では珪藻土が、防カビ性では漆喰のほうが良いようです。
塗り壁の費用は、【6畳で12万~19万程】で、工事期間は【2~4日】です。
土壁をリフォーム②:クロス
クロスのメリットは、デザインや色が豊富で部屋のイメージを変えることができること、手間がかからないので費用が抑えられることです。
デメリットとしては、クロスは土壁特有の穴を塞いでしまいますので、土壁の風合いや調湿機能を生かすことができません。
しかし、機能性に優れたクロスもあります。
通常のビニールクロスより調湿性や脱臭性に優れた珪藻土クロスや、“汚れ・傷に強い”などの付加価値を携えたものもあるようです。
クロスの費用は、【6畳で8万~16万程】で、工事期間は【1~2日】です。
土壁をリフォーム③:ペンキ
ペンキのメリットは費用が安く、一番簡単に工事ができるところです。しかしクロスと同様、土壁の穴をふさいでしまうので調湿機能が無くなってしまいます。
ペンキはDIYには向いていますが、業者に頼むのであれば機能の面からも、デザインの面からもあまりお勧めされないようです。
ご自分でDIYしたい場合は良いかもしれませんね。
ペンキの費用は【6畳で6万~10万程】で、工事期間は【2~4日】ほどです。
土壁にカビができる?!カビが発生する原因や除去方法を大公開!!のまとめ
- 土壁にカビが発生する原因は、吸湿効果、汚れやほこりが落ちにくい、天然素材を使っていることである。
- 土壁のカビは、表面に発生している場合はエチルアルコール系除菌剤、内部の浅い部分に発生している場合は塩素系カビ取り剤を使用する。
- 土壁の侵食度は、エチルアルコール系除菌剤で拭いて落ちるか、土壁が崩れるかが目安になる。
- カビの予防は、ものをかけない、掃除する、換気することである。
- リフォーム方法は、塗り壁、クロス、ペンキがある。
いかがでしたか?
土壁にカビが発生してしまうと、見た目が良くないだけではなく、健康にも悪影響です。
土壁は風情のあるものですし、和室によく合う壁ですので、日ごろのお掃除で綺麗に保ちたいですね。