日本各地にあるお茶の産地。
京都の宇治茶や静岡茶などが思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。
福岡県にも八女茶という甘味が特徴の伝統的なお茶が存在します。
お茶は育て方や収穫の仕方により、それぞれ特徴に違いが。
一度飲んでみたくなる!八女茶の特徴
八女茶の特徴とは?二番茶までしか収穫しない品質重視の高級茶
八女茶とは、福岡県の八女市周辺で生産されているお茶です。
八女市周辺の寒暖差が大きく雨の多い気候が、日本茶の栽培に適しており、栽培面積や収穫量は全国で6位を誇っています。
特に八女茶が他の産地のお茶と違った特徴としては、茶葉の収穫が二番茶までとされていること。
二番茶とはなんのこと?
お茶は、芽を収穫した後も、何回も成長した芽を摘むことができます。
お茶の呼び方
その年最初の新芽を摘み取って作ったお茶のことを「一番茶」と呼び、それ以降摘み取った順番に「二番茶」、「三番茶」と呼ばれます。
一番茶は馴染みのある「新茶」の呼び名で呼ばれることが多いです。新茶は旬をより表す時に使われる呼び名です。
一度成長したお茶の木は正しい管理方法の下で35年以上もの間、収穫することができるとされています。
八女茶の収穫が始まるのが、4月中旬頃。この時期に摘まれたのが「一番茶」。
6月中旬から7月上旬にかけて「二番茶」が収穫されます。
他の産地のお茶の多くが、二番茶以降の「三番茶」を摘み、四番茶を摘み取る場合もあります。
八女茶が二番茶までの収穫にこだわる理由は?
一年の内の最初のから二番目の収穫で終えてしまうと、収穫量としては少なくなってしまいます。
お茶の木を休ませて、次の一番茶をの品質を保つため。
たとえ面積に対して、生産量が少なくなってしまうとしても、次に育つ茶葉のことを考え、木を休ませる期間を長くしているのです。
色鮮やかで、厚みもある「量より質」にこだわった高級茶葉を作り続ける製法ですね。
栽培に適した土地であるのに対し、生産量は3%程しか占めていません。
そのため八女茶は、希少価値の高いブランドとされています。
お茶の木を大切に摘まれる八女茶は、どんな香りや味を楽しむことができるのでしょうか。
【八女茶の特徴①甘味】渋みを感じさせない濃い甘味
八女茶の味わいの特徴としては、なんといっても甘味が抜群であることです。
とろりとした深みのある甘味が楽しめるお茶とも表現されます。
甘味の強い生菓子と合わせるより、少し塩味や辛みのあるおかきとも相性が良いという声もありました。
他にはない濃い甘味の秘訣
強い特徴的な甘味は、甘味を出すために長期間手間暇をかけ、伝統的な手法によって生み出されていました。
お茶は摘む前に、一定期間の間、日光を遮ります。
これは、お茶の旨み成分であるテアニンが、日光によって渋み成分のカテキンやカフェインに変化するのを防ぐという目的です。
通常は遮る期間も2週間程のところ、八女茶では20日間程。
更に、現代では化学繊維で新芽を覆う産地が多いですが、八女茶は昔からの「稲わら」で覆う伝統的な手法を守っています。
【八女茶の特徴②香り】爽やかな香り
濃い甘味に対し、八女茶の香りは後味が爽やかであるのも特徴です。
お茶の旨みは余すことなく、濃厚に味わえ、くどくない爽やかに香りが鼻を抜ける感じが楽しめます。
【八女茶の特徴③見た目】細かい茶葉から出る色鮮やかなグリーン
八女茶の茶葉は一般的な他の日本茶に比べて少し細かいとされています。
茶葉一つ一つが細かいことにより、お茶の色はしっかりと出ます。
特に八女茶の中でも人気がある玉露はとても綺麗な色です。
八女茶の発祥は?約600年の歴史あるお茶
今から【約600年前】に中国の修行から帰ってきた臨済禅宗の僧侶が、八女茶の製法を伝えたとされています。
当時建立された八女市の黒木町にある霊巌寺では、今でも僧侶への献茶会というのが開催されるようです。
日本でお茶が栽培され始めたのは、それより以前の鎌倉初期。佐賀県に日本で初めてとなる木が植えられました。
日本初の木から摂れた種が、日本各地に広まっていったのですが、八女茶は少し遅めの起源であり、日本でも新しいお茶です。
八女茶がブランドとして、商標登録されたのも平成20年(2008年)のこと。
生産量が少なかったこともあり、大きな産業として発達していない時代が長かった八女茶。
他の産地の生産者からも製法の効率化を図り、今のブランドになっています。
メモ
まだまだブランド名で呼ばれるようになって日が浅い八女茶ですが、魅力的でこれから更に有名になっていきそうですね。
全国茶品評会にて10年連続で農林水産大臣賞、16年連続産地省を受賞した実力もあります。
福岡では既にスイーツやパンにも使われるフレーバーとしても八女茶は人気がありますし、お土産として八女茶のお菓子も定番です。
自分の住む地域がどのお茶の産地に近いかでも、認知度は大きく変わってきそうです
八女茶で飲むべきはやっぱり玉露?!栽培方法や製法で味わいも変化
どのお茶も摘む芽は同じもので、栽培方法に手を加えたり製法を変えることにって、様々な味わいに変化します。
お茶の面白いところですね。
八女茶にも、最高級品とされる「玉露」から、私たちの日常に身近な煎茶やほうじ茶があります。
福岡県で採取された八女茶から作る、それぞれのお茶の特徴は?
【八女茶の玉露】全国生産量一位!一度は飲みたい最高級品
八女茶と言えば玉露(ぎょくろ)のイメージがあるほど。
品評会で評価されているのも玉露です。
お茶の生産量が全体では6位なのに対し、玉露では日本一であることから、玉露がいかに有名なのかがわかりますね。
お茶を摘む前に芽を日光から覆い、甘味を引き出す被覆製法が、玉露の製法です。
おいしい飲み方
50度程の低温のお湯で淹れるのが、玉露の甘味と旨みを堪能できる淹れ方です。
【八女茶の煎茶】緑茶として一番飲まれる煎茶も甘味が強い
お茶の加工の約8割が煎茶とされています。
私たちが普段飲んでいる緑茶は、煎茶であることが多く、代表的なお茶です。
渋みの成分であるカテキンやカフェインが玉露より含まれています。
甘味だけでなく渋みの調和も美味しいお茶です。
八女茶では、煎茶であっても、玉露のように甘味を強く引き出す被覆栽培をすることが多いようです。
おいしい飲み方
低温のお湯で淹れれば、特有のとろみある甘味を。高温だと深みのある味わいを楽しめます。
【八女茶のほうじ茶】香ばしい香りでリラックス効果も
煎茶や番茶を焙煎することで、香ばしさを出したお茶。
熱湯で簡単に淹れることができ、より日常的です。
番茶は少し大きく成長してしまい、硬くなった茶葉で作られます。
茶葉は成長ごとに、カフェインを含みにくい特徴があるため、ほうじ茶であれば比較的カフェインも気にせずに飲むことができます。
リラックス効果のあるテアニンという成分が豊富です。
おいしい飲み方
就寝前のリラックスタイムや、高温で淹れることができるので、ホッと一息温まりたいときにも♪
【八女茶の抹茶】まろやかな甘味でお菓子にも
八女茶で作られる抹茶は渋みが少なく、まろやかな甘味が特徴とも言われています。
石臼で挽くことにより、ふくよかな香り、濃い緑色に、きめ細やかな泡が立ちます。
抹茶というと「京都」のイメージもありますが、八女茶も抹茶としてまろやかな甘味を楽しむことができるんですね。
抹茶であれば、細かく挽いた茶葉ごと飲んだり、食べたりすることになるので、お茶の健康に良い成分を無駄なく体に取り入れることができます。
おいしい楽しみ方
抹茶といえばやはりスイーツでしょうか。八女茶の抹茶を使ったスイーツもたくさんあります。
八女茶との違いは?!他にもある日本の美味しいお茶
九州は全国有数のお茶どころです。
お茶は日本では、秋田県から沖縄県で栽培されています。
しかし、元々寒い気象が苦手な植物で、商業用の茶葉は茨城県や新潟県より南の地域で栽培されています。
九州は特に、年間を通しての平均気温も理想的で、土壌も適した環境です。
日本初のお茶の木が植えられた佐賀県の嬉野茶。
実は日本で一番生産量が多い鹿児島県の知覧茶が有名です。
鹿児島県は生産量も多いのに、「知覧茶(ちらんちゃ)」という名前は最近になって耳にすることが増えてきたのではないでしょうか。
以前は、鹿児島県の茶葉は「知覧茶」だけでなく、「頴娃茶(えいちゃ)」や「川辺茶(かわのべちゃ)」、それぞれ独立したブランドとして存在していました。
2017年に「知覧茶」一つのブランドに統一されています。
メモ
改めてお茶のブランドや呼び方にはたくさん種類があることがわかりますし、それだけ日本で発達してきた文化の表れのような気がします。
これから「知覧茶」一本に統一することで、更に全国で飲まれるお茶として有名になっていきそうですね。
同じお茶どころ九州で栽培された、八女茶と知覧茶にも違いがあります。
八女茶と知覧茶の違いは甘味の引き出し方!深蒸し茶が有名
八女茶は玉露で特に有名なブランドでした。
知覧茶は「深蒸し茶」で飲まれることが多いです。
深蒸し茶とは、その名の通り、一般的な茶葉よりも長い時間蒸します。
お茶の製造工程でも早い段階で、蒸す作業は行われます。
煎茶であれば、30秒~40秒程。深蒸し茶は2倍の60秒程です。
長い時間蒸すことによって、渋みが抑えられ、茶葉の甘味を引き出すことができます。
ポイント
知覧茶は「深蒸し茶」で甘みのある味わいが楽しめる。
八女茶は、日光を遮る方法で、強い甘味を感じるお茶を作っていたのに対し、知覧茶は蒸し時間で甘みを出しているのですね。
おいしい飲み方
八女茶は50度程の低温で淹れるのがオススメでしたが、知覧茶は沸騰させたお湯を少し冷ました【80度前後】でおいしく入れることができますよ。
茶葉の大きさは、八女茶同様少し細かめで、お茶の色も出やすく、茶葉の栄養を摂ることもできます。
八女茶と知覧茶でも新茶の時期が違う!日本で一番早い新茶
新茶の収穫時期は、よく桜前線と一緒と表現されています。
南の地域から暖かくなる順に、新茶が収穫されはじめるのです。
本土の一番南に位置する鹿児島でとれる新茶は「走り新茶」とも呼ばれています。
ポイント
知覧茶の新茶は3月末頃から楽しめる。
八女茶の新茶は4月中旬頃であったのに対し、同じ九州でもこれだけ差がでています。
毎年新茶を楽しみにしているお茶好きの方には、知覧茶の新茶を待ちに待っているのかもしれませんね。
八女茶の特徴は他のお茶にはない【濃い甘味】!二番茶までの高級玉露まとめ
まとめ
- 八女茶とは、福岡県八女市周辺で栽培された日本茶。
- 渋み成分を抑える伝統的な被覆製法が、特有の濃い甘味の秘訣。
- 八女茶の茶葉の収穫は二番茶まで。
- 生産量は少ないが、品質は最高級。
- 八女茶は特に玉露で有名。
- 八女茶は比較的新しいブランドである。
- 同じ九州、鹿児島のブランドは深蒸し茶で有名。
- 八女茶と知覧茶では茶葉の甘味の引き出し方が違う。
緑茶は日本に伝えられ、独自に発達してきた日本の文化です。
産地により製法も特徴があり、それぞれの味わいを引き出しています。
私たちの身近にあるようで、収穫の仕方や、栽培する地域の特徴など、初めて知ることも多かったのではないでしょうか。
私自身、八女茶は一度しか飲んだことが無いのですが、その美味しさに感動したことが忘れられません。
九州では有名な八女茶も、関西ではあまり目にすることが無く、また飲みたいなと思う日々です。
今回八女茶の特徴を知り、興味を持っていただければ八女茶のファンとしても嬉しいです!