唐突ですが、あなたは百合根(ゆりね)を食べたことはありますか?私は食べたことがあります。
でもそれは実家にいたときで、数か月に1回ほど。たまに作ってくれる茶碗蒸しの中に入っている程度でした。
実は最近、茶碗蒸し以外の調理法で食べる機会があったのですが、とても美味しかったことを友人に話していたら
「百合根って食べれたっけ?お腹痛くならないの?」と言われてしまいました…。
調べてみると「百合根には毒がある」と思っている人が、一定数いるんですね。特にあのシャキシャキ食感の百合根って美味しいのに。
調理次第でより一層美味しくなり、しかも不足しがちな栄養素もたくさん含まれている百合根。
今からその魅力をレシピも併せてご紹介していきますね。
百合根には毒があるの?食用でないものは要注意!
結論からいいますと、百合根には毒はありません。しかしそれは食用の百合根に限ります。
百合根とは、名前の通りユリ科の植物で球根部分のことをいいます。
ユリ科の植物でも一部のものに毒はありますが、食用の百合根には毒はないので、食べても問題ありません。
ほのかな甘みと苦みがあり、にんにくに似たホクホクとした食感があります。
百合根1個あたりの大きさは100~120gほど。もともとアイヌ人が北海道で自生していた百合根を食べていました。
ただ現在流通されているものは、食用に改良されたものです。
百合根に毒があると思っている人は、食用とそうでないものが混同しているのかなと思います。
食用とされる百合根は3種ある
食用とされる百合根はオニユリ、コオニユリ、ヤマユリの3種です。
それ以外の観賞用の百合根は味がとても苦く、食べれたものではありません。
主な産地は北海道になりますが、北海道で栽培される百合根のほとんどは「コオニユリ(小鬼ユリ)」です。
メモ
百合根って完全に日本のものと思ってましたが、原産地は東南アジア、中国だそうです
百合根に毒はないが灰汁(あく)は強い
百合根には苦みがありますが、それは灰汁からくるものです。
灰汁を抜く方法は簡単で、加熱時間を長くすること。そうすることでマイルドになり、食べやすい味になります。
茶碗蒸しなどに入れるときは、一度加熱すると美味しく食べることが出来ます。
観賞用の百合根は食べてはダメ!
観賞用として売られている百合根は食べてはいけません。
販売されているユリの球根は、球根腐敗病を予防するために薬剤に浸してあるので、それを食べるのは危ないです。
また、ユリの栽培時も食用を想定しておらず、農薬等の薬剤を使用している可能性があります。
それらの薬剤の成分が球根に残っているので、食用として流通しているもの以外は、口にするのはやめておきましょう。
注意
特に犬や猫の口に誤って入ってしまうとかなり危険です。ペットを飼っている人はユリの扱いには、かなり気をつけないといけません。
実は漢方薬にも使われる百合根が持つ効能と栄養素
根菜類の中でもタンパク質が多く、その量はじゃがいもの2倍です。
他にもカリウム、鉄、リン、カルシウムなども豊富に含まれています。
でんぷんの含有量が多いので、加熱によるビタミンCの損失が少ないのも大きな特徴です。
加熱をすると表面のでんぷんは糊化します。糊化するとビタミンCの損失が少なくなります
グルコマンナンと呼ばれる食物繊維も豊富なので、便秘や整腸効果もあります。
また古くから「百合(びゃくごう)」という生薬として利用されてきた百合根。
百合根にはイライラを落ち着かせる効果があり、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)という漢方薬にも処方されています。
それでは特に豊富に含まれている栄養価を詳しく紹介します。
カリウム(K)
740mg/百合根100gあたり
1日で必要な量…2500mg〜3000mg
生理的作用…筋活動、神経伝達に関わっており、浸透圧が一定に保たれるように調節をしてくれます。欠乏すると、筋力の低下に繋がります。
鉄(Fe)
1mg/百合根100gあたり
1日で必要な量…18~64歳の女性では月経なしの場合6.5㎎。 18~74歳の男性では7.5㎎。
生理的作用…ヘモグロビンの鉄とミオグロビンの鉄があります。
ヘモグロビンは酸素を運搬し、ミオグロビンの鉄は血中の酸素を細胞に取り入れます。
欠乏すると、貧血になったり疲れやすくなります。また乳児だと発育の遅れが見られます。
葉酸
77㎍/百合根100gあたり
1日で必要な量…18歳以上の男女ともに240㎍です。
ただし妊娠している場合はさらに240㎍が追加で必要です(合計で480㎍必要)
生理的作用…核酸の合成やアミノ酸の代謝に作用し、貧血にも効果的です。また身体の成長と発育を促進、胃腸粘膜の機能を正常にしてくれます。
欠乏すると、貧血や口内炎などが起こりやすくなります。
カルシウム(Ca)
10mg/百合根100gあたり
1日で必要な量…男性は18~29歳で800㎎、30~74歳で750㎎
女性は18~74歳650㎎
生理的作用…骨や歯の硬組織を作ります。血液をアルカリ性にし、血液の凝固作用にも関係します。
心筋や筋肉に関しては、主に収縮作用を促します。欠乏すると骨や歯が弱くなり、神経過敏になりやすくなります。
ビタミンC
9mg/百合根100gあたり
1日で必要な量…成人では100㎎/1日です
生理的作用…コラーゲンの生成を増し、細胞間の結合組織を強くしてくれますが体内に蓄えられる量は少ないです。
病原菌やウイルスに対しても効果的に発揮し、抵抗力が増し、抗酸化作用もあります。
ただビタミンCは体内では作られないので、食事から摂取する必要があります。
百合根に含まれるビタミンCに関しては、部位によって含有率が異なります。
100%が標準としたら、外周(外側)が95%、内部が125%のビタミンC含有率になります。これは百合根に限らず、さつま芋やじゃが芋も部位によって含有率が変わります。
これを聞いて百合根の内部ばかり食べずに、まるごと食べましょう(笑)
百合根の栽培って実は大変なんです…
百合根の国内生産の99%は北海道です(残りの1%は東北の一部や京都の丹波などで作られています)。
北海道の中でも真狩村(まっかりむら)というところで作られており、北海道内の作付の約3割を占めています。
真狩村のほとんどの農家は百合根を生産しています。また周辺の羊蹄山(ようていざん)でも生産されています。
真狩村の位置
百合根は全国で栽培可能ですが、北海道のような冷涼な気候は、高品質な百合根の栽培に適しています
百合根作りには6年の歳月が必要
百合根は、畑に植え付けするまでに3年、畑に植え付けてから更に3年の月日を必要とします。
みなさんの食卓に並ぶまで、なんと6年の年月がかかります。
〜3年目
まず2年かけて、母球と呼ばれる状態に育てます。その母球から種球を半年かけて増やします。この時点で種作りだけで3年もかかっています。
さらに、畑は毎年植え替えなければならず、一度植えた畑には最低でも4年は作付できない作物です。
虫やウィルスに弱いため、養成段階では※1寒冷紗で覆います。
※1寒冷紗(かんれいしゃ)とは…ポリエチレンなどの化学繊維や、綿、麻などで作られています。農業の分野では農作物を覆い、寒さよけや日よけとして使われています。
合言葉で種をまいたら寒冷紗(かんれいしゃ)といわれているぐらい、必須の作業になります。
5年目
夏頃(7月の上旬頃)に蕾ができ始めたら、花に養分を取られないために※2摘蕾(てきらい)作業を行います。この時点で5年目になります
ここでもウィルス株の抜き取りはしっかり行なわないといけません。
優良な種球を確保することと、病害虫防除を徹底することが栽培する上での大きなポイントになります。
※2摘蕾作業とは…蕾を摘み取ること。実の収穫量や花の数を増やすために、必要な園芸作業になります
6年目
春になるとやっと販売に向けての植え付けです。その年の夏にまた摘蕾作業をして根に栄養が届くようにし、秋の収穫まで大切に育てます。そして9月下旬ごろに収穫が始まります。
百合根を使ったオススメのレシピ
百合根の収穫時期は9月下旬~12月ですが、収穫してから2~3か月間は寝かせます。でんぷんから糖分に変わるには、そのぐらいの期間が必要なのです。市場に出回るのも冬ごろになります。
ここでは簡単で百合根の魅力がわかる、オススメのレシピを紹介します。
百合根饅頭
百合根の独特のしっとりとした舌触りはスキな人にはたまりません!
「私だってこんなの作れるんだぞ」
「よ~し 今日はみんなをビックリさせてやる」と気合いを入れたい時にどうぞ♪
百合根饅頭は正直手間はかかります。ですが、たくさん余ったときに一気に消費ができるのと、百合根の風味を損なわない仕上がりになり、味はとてもおいしいです。ここぞとの一品にはもってこいです。
百合根の梅肉和え
ゆり根を使ったゆり根の梅肉和えの作り方の紹介です。
個人的に大好きな食べ方がこの梅肉和えです。百合根には少し食感が残っているほうが美味しいと思っているので、湯がき時間が大切だと思っています。
梅肉のさっぱり感が良い仕事をしてくれます。
百合根のかき玉すまし汁
百合根と卵の澄まし汁です。
汁には少しトロミをつけて優しい喉越しに。
「茶碗蒸しを作るのはちょっと面倒だな…」そんなときは、私もかき玉汁を作るのですが、卵のふわっと感と百合根のやさしい食感が絶妙に合います。
少しだけ余ってしまった百合根の使い道としてオススメです。
敷居が高く感じていた百合根も、下処理はとても簡単だし、味もそこまでクセがないので、扱いやすいんですよね。食卓に並べば、一気にグレードアップです。
百合根は毒がある⁈気になる効能や成分は?美味しい食べ方も紹介!まとめ
今回は百合根の毒についてのお話しをしました。
- 食用の百合根には毒はありません
- 百合根は栄養価が高い食材で昔から滋養強壮として親しまれてきた
- 生産地は北海道で作られているが、そのほとんどが関西圏に入ってきている
- 京都ではお正月料理に使われている
- 百合根は出来るまで6年もかかる、非常に手間ひまかかる食材である
- 実は調理の幅は広い。ポイントは百合根の火加減にある(と思っている)
今回は百合根についてお話ししました。
百合根は聞いたことはあるけど、食べたことがない人もいるのではないでしょうか。
こうやって調べてみると、百合根は栄養価は高いし、味もクセがないので、実は食しやすいものというのがわかりますね。
ただシーズンもので年中出回っていませんが、秋から冬にかけてスーパーでもたくさん見かけると思います。
今年の冬は、百合根を冬の味覚に一つとして、加えてみませんか?