2011年9月6日、那覇発・羽田行きのANAの航空機が高度1万2500メートルを飛行中に突然反転し、やがてひっくり返り背面飛行を始めるという驚きの事件が起こりました。操縦していた副操縦士への処分はどうだったのでしょう。退職されたのか、現在はどうしているのかについてまとめてみました。
ANAの背面飛行の際、副操縦士への処分はどのように行われたのか
面白いと言ったら、不謹慎になりますが、航空業界では、事故を起こした場合には処分が行われるということはあまりありません。
失敗したから処分を行うというのは、いわば昭和の日本的な発想と言えてしまうかも知れません。
大事なことは責任追及ではなく原因の究明
航空機の事故において、一番重要なことは、責任追及ではなく原因の究明です。
このため、今回のANAの副操縦士に対しても、処分ということはなく、事故が起こった状況を、洗いざらい話すように指導がされるはずです。
航空業界では、問題の当事者に対し、処分をしない代わりに、全ての内容を話してもらうようにするというのが文化としてあります。
処分することを前提としていると、当事者、今回の場合は副操縦士は自らの保身のために真実を話さなくなり、原因究明に時間がかかってしまうだけでなく、真実が闇の中になってしまうことになります。
当事者に対しては、人の命を預かる仕事ですから、徹底した再訓練のが行われることとなります。制裁的な意味合いや処分としてではなく、あくまでも、再発防止ということを目的として行います。
当然、人事から懲戒処分を実施するということもありません。
航空業界はこうやって、原因究明を最優先し、再発防止を最重要としているのです。
失敗したらすぐに責任追及に全精力を傾ける、ほかの業界とは違っているようです。
以前、JR西日本における尼崎駅での大事故が、電車の遅延による、懲罰が嫌だったので速度を出しすぎたという話がありましたが、それと比べると、随分違う内容に、驚きさえ覚えます。
ANAの背面飛行の副操縦士は退職したのか?現在は?
正式な記録はありませんが、おそらく、徹底的な再教育を施され、業務に復帰しているはずです。
参考に、過去10年間で社内処分により資格を取り消されたのは酒気帯びで出勤した場合のみだけです。
ニアミス、操作ミス、オーバーラン、乱気流による事故で資格を取り消されたパイロットはおりません。
もともと組合の力の強い業種ですし、育てるのに多額の費用がかかっておりますので
健康診断で引っかからない限りは資格の取り消しなどほとんどないのです。