人生100年時代となり、定年の年齢が引き上げられ、65歳以上になっても安心して働けるように法整備も進んでいます。
かつては65歳以上は雇用保険に加入できませんでしたが、2017年の法改正により65歳以上も雇用保険に加入できるようになりました。
65歳以上で雇用保険に加入するメリットや給付金、新たに始まった雇用保険ジョブホルダー制度についてお伝えします。
Contents
雇用保険に65歳以上で加入するメリットは?
65歳以上で雇用保険に加入する最大のメリットはわずかな保険料で保障が受けられること、つまり要件を満たせば高年齢求職者給付金、育児休業給付⾦、介護休業給付⾦、教育訓練給付⾦の支給対象になるということです。
雇用保険料はわずか数百円
令和3年度の雇用保険料率は以下の通りです。
一般の事業:労働者負担 3/1000+事業主負担 6/1000=9/1000
農林水産業:労働者負担 4/1000+事業主負担 7/1000=11/1000
建設の事業:労働者負担 4/1000+事業主負担 8/1000=12/1000
つまり、給与が20万円であれば保険料は600円か800円になります。
4つの給付金の支給対象になる
それぞれ、支給を受けるための要件がありますが、要件を満たせば支給の対象になります。
⾼年齢求職者給付⾦について
⾼年齢求職者給付⾦は、65歳以上の高齢者の被保険者が離職して、「失業状態」となった場合にもらえる給付金です。
高年齢求職者給付金は年金との併用が可能で、何度でも受給できることがメリットです。また、健康であれば、失業した時の心配をすることなく働き続けられることもメリットです。
給付金を受け取る条件
この給付金を受け取る条件は、①失業状態にあること、②一定以上の被保険者期間が必要です。
失業状態とは以下の通りです。
ポイント また、一定の被保険者期間とは、離職日の以前の1年間に、被保険者期間が6か月以上あることが条件です。 具体的にいうと、賃金の支払いのもととなった日が11日以上ある月、それが6か月必要です。簡単に言うと、11日以上働いた月が半年以上あればOKです。 参考:厚生労働省HP 離職されたみなさまへ 高齢者求職者給付金と基本手当、いわゆる失業保険とは違う点がいくつかあります。 高年齢求職者給付金は、年金と併用して受け取ることができ、年金が減らされてしまう心配はありません。年金を受け取りながら働いている方には強い味方であり、最大のメリットといえます。 その一方で基本手当は年金との併用はできません(どちらか高いほうを受け取ることができます) また、高年齢求職者給付金の支給方法は一時金という形で一括になります。支給金額は被保険者期間が1年未満であれば30日分、被保険者期間が1年以上であれば50日分です。 それに対して、基本手当は次の仕事が見つかるまでのセーフティネットであり、支給金額と分割支給である点が違います。 2017年の法改正により、育児休業給付⾦の対象となる⼦の範囲について拡大され、養⼦縁組⾥親、養育⾥親等も対象となりました。人生100年時代、何があるかわかりませんので活用できるケースもあるかもしれません。 介護休業給付⾦の対象家族も、以前は、祖⽗⺟、兄弟姉妹、孫は「同居かつ扶養」の場合のみ、対象とされていました。 しかし、2017年の法改正により、「同居かつ扶養」の要件を廃止され、対象家族が拡大されています。 また、介護休業の取得回数も変更となり、同一の対象家族・同一の要介護状態の場合、原則1回93日までから、通算93日分を最大3回に分割して取得できるようになりました。 対象家族拡大に伴い、活用できるケースはあるかもしれません。 厚生労働大臣が指定する教育訓練を開始する場合、被保険者である方、または被保険者として離職して1年以内に教育訓練を開始した場合、要件を満たせば、教育訓練給付⾦の対象となります。 新しいキャリアを開拓したいと考える方をサポートする制度のため、活用できるケースはありそうです。 ※教育訓練給付制度について詳しくはこちら 自分が給付金の対象になるのか、要件を満たしているのか、悩んだ方はハローワークに相談してみてくださいね。 ※ハローワークの所在地はこちら 65歳以上の雇用保険の加入は任意ではなく義務です。 ①週の所定労働時間が20時間以上 以上の条件を満たしている場合、雇用保険へ加入の義務があり、高年齢被保険者となります。自分が条件を満たしているか、雇用保険料を納めているのかこれを機に一度確認してみてもいいですね。 また、今年の法改正により複数の事業所で働いている方も、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できるようになりました。後ほど説明しますね。 参考:厚生労働省HP 雇用保険の適用拡大について 失業状態になったときに、高年齢求職者給付金や特例一時金を受給することができます。これは、被保険者の種類によって変わります。 ⾼年齢求職者給付⾦が受け取れる方は、高年齢被保険者の方です。高年齢被保険者とは、65歳以上の被保険者で「短期雇用特例被保険者」および「日雇労働被保険者」ではない方のこと。 ⾼年齢求職者給付⾦は、さきほど説明した通り、高年齢被保険者の方が失業状態の時に支給されるものです。 支給される金額は、原則として、離職する直前6カ月間の賃金の総額を180で割った額(「賃金日額」といいます)の50~80%の額となります。 支給を受けられる日数については、被保険者として雇用された期間によって変わり、1年未満は基本手当日額の30日分、1年以上は50日分となります。 先程説明した通り、高年齢求職者給付金は年金との併給が可能で、何度でも受給できます。健康であれば、失業時の心配をすることなく働けるのでぜひ活用してくださいね。 参考:厚生労働省HP 雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和 2 年8 月 1 日から~ 参考:厚生労働省HP 離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内> 特例一時金を受け取れる方は、短期雇用特例被保険者の方です。 短期雇用特例被保険者とは、「スキー場で働く人」や「海の家で働く人」など季節的に雇用されていて、4ヶ月以上の雇用期間かつ1週間当たり30時間以上働く方のこと。 短期雇用特例被保険者は65歳以上に限らず、65歳未満の方もいます。 【短期雇用特例被保険者の要件】 ※ただし、短期雇用特例被保険者で同じ会社に引き続き1年以上雇用されることになった場合は、1年以上となる日を基準に一般被保険者もしくは高年齢被保険者に切り替わる 一定の被保険者期間は、高年齢被保険者と同様に、離職日の以前の1年間に、被保険者期間が6か月以上あることが条件です。 支給される金額は、原則として、離職する直前6カ月間の賃金の総額を180で割った額(「賃金日額」といいます)の50~80%の額となります。 支給を受けられる日数は基本手当日額の30日分(当面の間、40日分)です。 参考:厚生労働省HP 離職されたみなさまへ <特例一時金のご案内> 高年齢求職者給付金、特例一時金どちらも受け取るためには管轄のハローワークに行き、求職の申し込みと離職票の提出が必要になります。 この日から失業状態となり、さらに7日間経過した後に給付金が支給されます。 ただし、自己都合で退職した場合や重大な理由により解雇された場合は7日間経過後、さらに2か月間支給されません。 高年齢求職者給付金、特例一時金受給手続きに必要な書類は以下の通りです。 給付金をきちんと貰うために、離職票をもらったらすぐに手続きするようにしましょう。 今年になり、新たに雇用保険マルチジョブホルダー制度が始まりました。 最初にも説明した通り、これまでの雇用保険の加入条件は、主な事業所での労働条件が①週の所定労働時間20時間以上かつ②31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合です。 これに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して適用対象者の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申し出を行うことで、申し出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(以下「マルチ高年齢被保険者」といいます。)となることができる制度です。 つまり、雇用保険の加入対象者が広くなったといえます。 ①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者である 以上の条件を全て満たし65歳以上の労働者が自分でハローワークに申し出を行った場合、「マルチ高年齢被保険者」になることができます。 通常の雇用保険と異なり加入義務はありませんが、一度加入すると任意脱退はできません。 雇用保険マルチジョブホルダー制度で「マルチ高年齢被保険者」になることは、「高年齢被保険者」になることと同じです。 失業状態になったときには、要件を満たせば高年齢求職者給付金が⽀払われ、そのほか、育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付等も給付の対象になります。 また、高年齢求職者給付金は⼀⽅の事業所のみを離職した場合でも受給することができます。育児休業給付・介護休業給付については、適用を受ける2つの事業所で休業した場合が対象です。 これまで複数個所で働いているために雇用保険の条件を満たさなかった65歳以上の方にとって朗報といえます。 参考:厚生労働省HP 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します2022年1月1日スタート 参考:厚生労働省HP 雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット 65歳以上の方が雇用保険へ加入することはメリットがあるといえます。今年から、要件を満たせば複数の事業所で働く方も雇用保険の対象に変わりました。 自分が対象なのかどうか、ぜひ一度確認してみてくださいね。
高年齢求職者給付金と基本手当との違い
高年齢求職者給付金と基本手当の違い
項目
高年齢求職者給付金
基本手当の違い
受給要件
6カ月以上の雇用保険の加入
12カ月以上の雇用保険の加入
支給方法
一時金として一括支給
28日分ずつを分割支給
一括支給の日数
30日(1年未満)もしくは50日(1年以上)
90日~330日
年金との併給
可
不可
育児休業給付金について
介護休業給付金について
教育訓練給付金について
雇用保険に65歳以上で加入する条件は?
②31日以上の雇用見込みがあること雇用保険に65歳以上で加入すると受け取れる一時金とは?
⾼年齢求職者給付⾦
特例一時金
季節的に雇用される者で次の①、②のいずれにあてはまる
①4ヶ月以上の雇用期間を定めて雇用される者
②1週間の所定の労働時間が30時間以上である者雇用保険に65歳以上で加入した時に受け取れる⾼年齢求職者給付⾦の申請方法は?
2022年1月1日開始!「雇用保険マルチジョブホルダー制度」
雇用保険マルチジョブホルダー制度における雇用保険の加入条件
②2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であるものに限る)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上(雇用保険に加入できるのは2つの事業所までで、2つの事業所は異なる事業主であることが必要)雇用保険マルチジョブホルダー制度のメリット
雇用保険に65歳以上で加入するメリットは?給付金や新制度を解説のまとめ