豆まきや恵方巻のイメージが強い節分。
みなさんは節分の時期に飾る柊鰯(ひいらぎいわし)をご存知ですか?
柊鰯とは鰯の頭を葉がついた柊の枝に挿した飾りのことで、古くから魔除けとして節分の時期に家の玄関に飾られてきました。
日本各地で続く柊鰯の風習ですが、じつは地域によって違いが多いのです。
基本的なことは同じでも飾っておく時期や捨て方、そして飾ってあるものが違うなんてことも。
今回は知っているようで知らない柊鰯についていろいろ調べてみました。
柊鰯ってどんなもの?どうして鰯の頭なの?
いつからいつまで飾るもの?どこの地域で飾られているの?
飾り方、処分するときの方法などもまとめたのでぜひご覧ください。
Contents
節分の柊鰯の頭はいつまで飾っていていいの?
節分の柊鰯のこの鰯の頭、いつからいつまで飾ればいいのでしょうか?
一般的には節分の日から翌日までといわれていますが、地域によって差があります。
そのなかでも多く見られたのが次の3つの期間です。
・小正月の翌日(1月16日)から節分の日まで
・節分から2月いっぱい
・節分の日から1年間
中には「鰯の頭が猫に食べられるまで」というおもしろい例もあるようです。
たしかに鰯の頭があったら猫や鳥が放っとかないかもしれません(笑)
ここまで差があると結局いつまで飾っていていいのかわからないですよね。
ただ絶対の決まりはないので、いつまで続けるかはお住まいの地域の風習に合わせるのが一番良いかもしれません。
節分に鰯の頭を飾る習慣はなぜはじまった?由来を調査!
魔除けや厄除けの意味をもつ柊鰯。
鰯の頭を飾るというなんとも奇妙な風習はなぜ生まれ、使われるのはなぜ鰯と柊なのでしょうか?
柊鰯の由来
柊鰯の歴史は古く、平安時代に書かれた『土佐日記』に935年(承平5年)の正月にある記述が残っています。
「小家の門のしりくべ縄のなよしの頭、柊ら、いかにぞと言ひあへなよ」
しりくべ縄はしめ縄、なよしはボラのことです。
当時はお正月のしめ縄に柊の枝と鰯の頭でなくボラの頭を刺していたようです。
じつは現在でも伊勢神宮で正月飾りとして販売されるしめ縄には、柊が飾られているんですよ。
引用 株式会社伊勢宮
ボラの頭がいつ鰯の頭に変わったのかは不明ですが、この平安時代の風習が柊鰯の始まりといえそうですね。
そして江戸時代には柊鰯のその姿が浮世絵に描かれています。
『婦女風俗十二ヶ月』勝川春章 画
女性が葉付きの枝を持って門口に飾ろうとしているのでしょうか。
持っているのは枝だけですが足元にはちゃんと魚の頭も用意されています。
他にも節分を描いた浮世絵や黄表紙にもたびたび柊鰯は登場しています。
すでに江戸時代にはその風習は広まっていたのですね。
なぜ節分に鬼が出るのか
節分というのは本来は季節を分ける節目のことで、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれの前日のことを指しました。
しかし日本では旧暦で新年の初めが立春だったため、立春の前日のみを節分と呼ぶようになったのです。
では節分に鬼が出るといわれるのはなぜなのでしょうか?
鬼はもともと、姿がに目に見えない存在の「隠(おぬ)」や「陰(おん)」に由来し、目に見えない気である「邪気」を意味していました。
そして季節の変わり目には邪気が生まれるということから「節分には鬼が出る」となったのです。
柊鰯に鰯と柊が使われる理由は?
日本では古くから家の門口に「門守(かどもり)」というお守りを飾り、災難や魔物から身を守ろうとする風習があります。
柊鰯もこの門守のうちのひとつです。
昔から「尖ったもの」「臭いもの」には魔除けや厄除けの効果があるとされていました。
柊は別名『鬼の目突き』ともいわれています。
葉がチクチクと尖っている柊は、その棘が鬼の目を刺して痛さで鬼を怖がらせて追い払ってくれるのです。
では鰯はどうでしょうか。鬼は臭いものが苦手です。
鰯のにおいと、さらに焼いた時の煙が鬼をいやがらせて家に近づけないようにしました。
尖った葉の柊と鰯の臭みの組み合わせは魔除けにぴったりだったんですね。
節分に鰯の頭を飾っている地域は?違うものを使う地域も!
節分に飾られる柊鰯。名前は知っていても実際に見たことのない方も少なくないと思います。
節分と鰯はイメージが結びつかない方も多いはず。
では具体的にはどこの地域の節分の風習なのでしょうか。
飾る期間含めて呼び方や特色など地域によって差があることがわかりました。
東北:青森、福島
関東:東京、埼玉、千葉、栃木、群馬
東海:愛知、岐阜、静岡
近畿:大阪、京都、奈良
中国:岡山、広島
東北と関東の一部から福島にかけてと西日本がメインですね。
中でも特に奈良県でこの風習が色濃く残っています。
西日本では『焼嗅(やいかがし)』『やっかがし』『やいくさし』『やきさし』ともいわれ、呼び方も地域によっていろいろ違いがあります。
一般的には鰯の頭を柊の枝に挿して飾る柊鰯ですが、地域によってはここも少し異なるようです。
東京近郊
柊の枝以外に種を取った大豆の枝(豆柄)を一緒に束ねて飾ります。
短冊を添える家庭もあるとか。
奈良県
鰯の頭と一緒に尻尾を挿すこともあります。吉野町では鬼ではなく熊野地方の山中に棲む一本足の妖怪「一本だたら」から家を守るためとされています。
そのほかにも鰯の頭ではなくニンニクやらっきょうを飾る地域や家内安全のお守りを添える地域も。
その土地土地によって風習に違いがあるのはよくあることですが、違う地域で実際に異なるものを見つけたら驚きがあっておもしろいですね。
節分の柊鰯!鰯の頭の飾り方は?処分する時はどうすればいい?
それではまず柊鰯を作ってみましょう!
必要なもの
葉のついた柊の枝 1本
焼いた鰯の頭 1つ
柊の枝は節分の時期になるとスーパーや生花店に売られています。
鰯の頭は焼いてから外しても、先に外して頭だけで焼いてもどちらでも大丈夫です。
あとは柊の枝に焼いた鰯の頭を口が上に来るようにして刺すだけです。簡単ですね!
胴(鰯の身)の部分はお好きな調理法でおいしくいただいて下さいね。
どのように飾るの?
出来上がった柊鰯は玄関先や門口に飾ります。
紐で吊るす、立てかける、門にしばりつける、ドアに貼りつけるなど方法は自由です。
最近では集合住宅も増えてきたので玄関の中に入れることもあるようですが、鬼を追い払うものなので可能であれば玄関の外に飾りたいですね。
処分する時はどうすればいい?
では期間を終えて取り外した柊鰯はどのように処分すればいいのでしょうか?
厄を祓ってくれた縁起物をふつうのゴミと一緒に捨てるのはなんだか気がひけますよね。
調べてみると処分方法は以下のようなものがありました。
・神社にお焚き上げをしてもらう
・どんど焼きに持っていく
・節分から灰になるまで燃やして、その灰を玄関前に盛る
・玄関先に埋める
安心なのは神社にお願いするかどんど焼きですね。
ただ近くに神社がない、どんど焼きは時期が合わない。
そして現在の暮らしだと自分で燃やしたり玄関先に埋めたりするのは難しいことが多いですよね。
そんな時は塩でお清めしてから半紙で包んで捨てましょう。これなら自宅でも簡単にできるしお手軽です。
その際はありがとうの感謝の気持ちをこめて捨てるとより良いですね!
生活環境に合った方法でぜひ参考にしてみてください。
節分に鰯の頭を飾るのはいつからいつまで?作り方や処分の仕方も!まとめ
西日本を中心に続いてきた、節分に鰯の頭を飾るという不思議な風習。
呼び名が柊鰯の他にも焼嗅(やいかがし)ややっかがしと地域によって違うことから始まり、
いつまで飾るかに関しては1日から1年など驚くほどの差がありました。
それだけ違いがあるというのは言い換えれば正解がないようなものなので、その家庭に合った無理のない方法で行うのが1番ですね。
最後に柊鰯について簡単にまとめました。
ポイント
・尖った葉が鬼の目を刺す。その痛みで鬼が逃げるので柊が使われる。
・鰯を使うのは臭いが強く、焼いた煙を嫌がるため。
・平安時代の正月飾りにボラの頭と柊の枝を刺していた風習が始まり。
・柊鰯は玄関先や門口に飾る。
・いつまで飾るのかは地域差がある。一般的には節分の日から翌日まで。
・塩でお清めして半紙に包んで捨てるのが簡単でおすすめ。
焼いた鰯の頭を葉付きの柊の枝に挿すだけで簡単に作れる柊鰯。
時代とともに生活は変わっていきますが、古くから続く伝統はいつまでも大切に守っていきたいですね。
次の節分にはみなさんも玄関先に飾ってみてはいかがでしょうか?