東北地方太平洋沖地震から10年、地震による災害で一躍有名になった「東京電力福島第一原子力発電所」の汚染水問題。
その原発から今も大量の汚染水が排出されています。
汚染水からトリチウム以外の放射性物質を取り除き、処理水となって年間5~6万トン増え続けています。
トリチウム以外⁉
ちょっと待って、トリチウムって除去できないの⁉
他の放射性物質は除去できるのに、トリチウムは除去できない理由って何?
今回はトリチウムの真相に迫ってみました。
Contents
トリチウムが除去できない理由には水の性質が関係している⁉
トリチウムが除去できない最大の理由は、ほとんどが「水」の形で存在しているからです。
トリチウムは日本語で「三重水素」とも呼ばれる放射性物質で、化学的には水素と同じ性質を持っています。
水(H2O)は、1つの酸素(O)と2つの水素(H)が結びついたものですが、この水素の1つがトリチウム(T)になっているのがトリチウム水(HTO)なのです。
放射性物質は、水に溶けたり混ざったりしていても、ろ過や吸着で除去することが出来ますが、トリチウムは水そのものとして存在しているため、除去する事がとても難しい物質なのです。
「トリチウムそのもの」のうちに除去できないの?
実は、トリチウムは単独で存在するのではなく「トリチウム水」として、ほとんどが水の中に存在しているので除去ができないのです。
トリチウムは高層の大気中で、宇宙線と大気中の窒素や酸素との核反応で作られています。
その量は年間【200g】程度で、その【99%】は空気中の水蒸気・雨水・海水として存在しているので、環境中のトリチウムを「トリチウムのみ」で確認することは極めて難しいのです。
環境中のトリチウムの居場所
性質が水とほとんど変わらないので、トリチウムで構成された水も化学的には「同じ水」、水の中からトリチウムだけを除去することはできないのです。
引用:Wikipedia
普通の水とトリチウム水を見分ける方法はある?
どっちも「水」なので、見分ける事はできません。
先ほども説明したように、海水・雨水・水蒸気など自然界にも普通に存在しています。
もちろん、私たちの体の中にも存在しています。
見た目も同じ、沸点なども普通の水と同じような性質を持ち、濾過などの除去方法でも取り除けない、何よりトリチウムと水素は見分けがつかないのです。
トリチウムが除去できない!私たち人体への影響はない?ある?
トリチウムは除去できないとしたら、私たちの人体に与える影響はどうなんでしょう?
調べてみると、両極端な意見がありました。
それぞれの意見を見てみましょう。
トリチウムは除去できなくても人体への影響は少ない
自然界のトリチウムは、人体に影響が出るほどの放射線量を含んでいません。
私たちが普段飲んでいる水にもトリチウムは含まれています。
水道水の中には【1リットルあたり0.1~1ベクレル】のトリチウムが含まれているんです。
WHO(世界保健機関)の飲料水ガイドラインでは、【1リットルあたり1万ベクレル】とされています。
トリチウムが人体に与える影響は、食品中の放射性物質の基準として設定されている放射性セシウムより極めて小さく、約1000分の1となります。
仮に、【10,000ベクレル】のトリチウムを含む飲料水を【1L】飲んだ場合に受ける放射線量は【0.00018mSv】となります。
放射線物質 | 1ベクレル当たりの線量 (実効線量係数:mSv/ベクレル) |
|
トリチウム | 0.000000018 | |
放射線セシウム | セシウム134 | 0.000019 |
セシウム137 | 0.000013 |
自然界のトリチウムの放射線はとても弱いのですが、「水」として存在することから、人体に取り込まれやすいのも特徴としてありますが、代謝系部分に取り込まれるので、汗や尿から大部分は体外に排出されてしまいます。
取り込まれた放射能は、半減するのに【12~13年】かかりますが、自然界での放射線量は微量なため健康への影響は少ないと言われています。
放射性物質なので人体に良いとは言えませんが、昔から存在していて、自然界のトリチウムでの健康被害は報告された事はありません。
トリチウムは除去しなければ人体に影響がある
分子生物学者の意見は正反対で、むしろ真逆だと言っています。
自然界でも宇宙からの放射線で日々トリチウムが作られていて、放射能が半分の数値になるまでおおよそ【12~13年】かかります。
実はトリチウムは微量でも体内に長期間とどまり、その間人体を内部被ばくにさらし続ける危険性があるのです。
ほとんど水と変わらないために、人体はトリチウムを水と区別できず体内の組織に取り込んでしまい、一定の部分が遺伝子(DNA)に組み込まれてしまう事があるんです。
遺伝子(DNA)に組み込まれたトリチウムが崩壊すると、化学的な結合力が存在しないヘリウムに変化し、遺伝子(DNA)が破壊されて、高い確率でDNAの鎖が切断されるのです。
そして、二重らせんのDNAの鎖が二本とも切断されてしまうと、DNAを正しく修復出来なくなり、細胞が癌化する確率が高くなると言われているのです。
トリチウムは除去できなくても外部被ばくは心配ありません
トリチウムは内部被ばくはありますが、外部被ばくはないんです。
トリチウムの出す放射線は、ベータ(β)線という放射線で、トリチウムの場合、そのエネルギーは非常に弱いもので、紙一枚でさえぎることができます。
環境中にあるトリチウムからβ線を受けたとしても、人間の皮膚で止まってしまうので、外部からの被ばくは無いのです。
実はトリチウムは除去できない訳ではない⁉トリチウム除去の実用化に向けて研究している近畿大学‼
両極端の意見を聞いて、良いか悪いかと聞かれれば、やはり「トリチウムを人体には入れたくない」これが本音ですよね。
実は、2018年6月、近畿大学工学部を中心とする研究チームによって、トリチウムの除去方法及び装置が発表されています。
アルミニウムを使い、放射性物質の一つであるトリチウムを含む水「トリチウム水」を分離・回収する方法と装置が、既に開発されているんです。
研究チーム
- 近畿大学工学部(広島県東広島市)教授 井原辰彦
- 近畿大学原子力研究所
- 東洋アルミニウム株式会社(大阪府大阪市)
- 近大発のベンチャー企業である株式会社ア・アトムテクノル近大
トリチウム水の除去装置!その新技術の方法は?
トリチウムを除去できる装置、その新技術はどんな方法なのか?
同じ心配は私だけではないですね、こんな質問を見つけました。
トリチウムを除去できる機械はないんですか?
あるんです‼
トリチウム水は、水と化学的性質がよく似ていることから、従来の除染技術では、汚染水から水とトリチウム水を分離することは困難とされていました。井原ら研究チームは、炭やスポンジのように多量の小さな穴を持つ構造「多孔質体」と、ストローのような細い管を液体につけた際に、液体が管の中を上がっていく現象「毛管凝縮」に着目し、この現象を除染技術に応用するため研究を進めてきました。 完成した多孔質体は、直径5nm(ナノメートル)以下の大きさの微細な穴「細孔」を有し、毛管凝縮によって細孔内に水とトリチウム水を取り込んだ後、トリチウム水を細孔内に保持したまま、水だけを放出する機能があります。この多孔質体を格納した装置(フィルター)によって、汚染水からトリチウム水を高効率に分離することができます。 また、多孔質体を加熱することで、細孔内に残ったトリチウム水を放出し回収することができます。装置は繰り返し利用できるため、低コストでのトリチウム除染が可能です。 本研究成果により、汚染水の容量を削減することが可能になり、汚染水の保管場所問題の改善が期待されます。
引用:Yahoo!知恵袋
トリチウムが除去できない⁉除去装置の実用化が不可能な理由とは?
トリチウムの除去装置があるのに、なぜ本格稼働しないのか?
理由は大きく【4つ】あります。
- 大量の処理水に対応できない
- 試験期間が短くてデータの取得が不十分、技術としてすぐには適用できない
- 取り除かれたトリチウムは高濃度になるので、その扱いをどうするかといった問題が解決できない
- 数億円の規模でお金が必要で、トリチウム水にこれだけのコストをかけることが難しい
本格的に実用化するには、開発されている除去能力のものより【3桁以上】大量の処理ができる装置が必要で、実用化は相当遠いようです。
また、分離技術ができれば全て解決するわけではなく、高濃度になったトリチウムを管理するリスクも含め、考えなければならないのです。
すぐに実用化できる技術ではなく、未だ検討の選択肢にも入っていないのが現状です。
現在近畿大学では、トリチウムを吸着させて取り除く技術の開発にも取り組んでいます。
今後も開発を続けるには設備をより大型化して、性能などを検証する必要があるとして、施設や実験にかかる費用をどう調達するかも課題なのです。
トリチウムが除去できない理由とは⁉除去装置の実用化は可能なのか⁉のまとめ
- トリチウムが除去できない理由は水そのものだから難しいのです。
- トリチウムは除去できない!私たち人体への影響はあります。
- 実はトリチウムは除去できない訳ではない⁉トリチウム除去の実用化に向けて日々研究されていますが、実用性はまだ先になりそうです。
私たちの生活に密着していたトリチウム、環境中には当たり前にあるもので、除去が難しい物質なのも理解できました。
環境中に含まれる量ならば私たちへの影響も少ないかもしれませんが、原発から排出される処理水の量を考えると無害とは言えません。
海洋放出には反対です。
以前、復興省が「トリチウム」のゆるキャラ⁉を作って叩かれていましたが、私はとても分かりやすいキャラクターでいいなと思っていました。
不謹慎⁉と言われましたが、キャラクターが悪い訳ではないですよね?
良くも悪くも興味を持ってもらい、放射性物質について事実知ってもらうことが一番大切なのに、とても良いアイデアだと思っていましたが…残念ですね。
私たちに出来ることは「正しい情報」を知ることです。
正しい情報を知れば、何が悪くて何が良いのかを自分で判断できるので。
私は、日本の優れた技術力がある限り、必ず解決できる日は来ると思います。
それまでの間、大量の処理水が海に放出されないように願うばかりです。