「私にはこれは出来ません」
難しくて上手くいかないことやお断りをしたいときに使うこの「出来ない」という言葉。
出来ないことをごまかしたり知ったかぶりせず正直に伝えることは時としてとても大切なことです。
「無理無理!私には出来ないって!」日常の会話の中で使うにはさほど気になりませんが、ビジネスシーンとなるとそうもいかないことがあります。
「出来ません」と敬語で丁寧に伝えたつもりでも、出来ないとはっきり言ってしまうとあまりにストレートで、相手に「やる気はあるの?」「努力する気はないわけ⁉」と思われてしまうことも。
そんなつもりはなかったのに、言い方のチョイスを間違えたがために相手との関係にひびが入ってしまった、なんて悲しいですよね?
角を立てず仕事相手に「出来ない」ということを上手く伝える別の言い方はないのでしょうか…
そこで、ビジネスシーンで役立つ「出来ない」の別の言い方について、具体的なシチュエーション別にご紹介していきたいと思います!
Contents
「出来ない」の別の言い方~することが難しい場合~
要求が高度なものだったり、日程が詰まっていて期日内に行うことが困難で、相手に無理だということを察知してほしい場合、「出来ない」ということを別の言い方で伝える具体例は以下の通りです。
- 大変申し訳ありませんが、今週中に資料を作成するのは難しく存じます。
- 大変恐縮ですが、参加者全てを把握することは難しいこととお見受けいたします。
- 私にはとても力が及びません。
「難しく存じます」「難しいこととお見受けいたします」という言い方を使うことによって、要望に応えたい気持ちはありながらもこちらの力が及ばず申し訳ないというニュアンスを含めることができます。
「出来ない」と伝えるより柔らかく、自分をへりくだった言い方にすることで、出来ない事実を相手に受け入れてもらいやすくもなります。
「出来かねる」という言い方もありますが、上記に比べて断定的な表現となる為、相手への敬意を示す場合には不向きであると言えます。
相手への敬意が伝わるかどうかということが、ビジネスシーンでの言葉の選び方の一つの基準としてとても重要です。
「出来ない」の別の言い方~自分が出来ないことを伝える場合~
相手の要求を自分が実現できる可能性が低い場合や不可能な場合、「出来ない」はどのような別の言い方で表すことができるでしょうか?
- 大変申し訳ありませんが、来週の会議へは出席しかねます。
- ご迷惑をおかけしますが、資料の提出は期限内に致しかねます。
「かねる」はある事をする事が困難であることを婉曲的に表現する動詞で、「致しかねます」のように丁寧語の「ます」と組み合わせて使われます。
先ほど述べた通り「できかねます」としてしまうと断定的、直接的な表現となる為、「致しかねます」とすると柔らかいニュアンスで伝えることができます。
ただし、「かねる」という動詞は婉曲表現なので「もしかしたら出来るかもしれない」と相手に誤解される可能性もあります。
はっきりと困難を伝えたい場合などは、後でご説明するクッション言葉を上手く用いるなどして曖昧な表現として伝わることを防ぐことが必要です。
「出来ない」の別の言い方~相手が出来ないことを伝える場合~
相手にとって不可能なことを伝えたいときの「出来ない」を角の立たない別の言い方で表す場合は、次のような言い方を使ってみましょう。
- こちらは期限切れのため、ご利用いただけません。
- 誠に申し訳ありませんが、会員以外のお客様はこちらのサービスをご利用になれません。
自分がすることが不可能な場合の「致しかねます」という言い方は、相手にとって不可能な場合には使えません。
「〇〇になれません」「〇〇いただけません」という言い方で申し訳ないという思いを含め柔らかく伝えましょう。
「ご利用できません」という言い方はよく聞かれますが、「ご(お)~できる」は、謙譲語の「ご(お)~する」の可能を表す言い方、つまり尊敬語として使うのは誤用とされているので、「ご利用できません」は相手にとって不可能な場合に使うのは適切ではありません。
「ご利用はできません」と助詞の「は」を加えれば文法的には問題ありませんが、「出来ない」事を相手の気分を害さずに受け取っていただくためにも、「ご利用になれません」「ご利用いただけません」という言い方で柔らかく伝えるようにしましょう。
「出来ない」の別の言い方~誘いを断る場合~
参加できない、出席できない場面、相手のご厚意に対し感謝の意を込めつつお断りを丁寧にしたい!
そんな時に使える「出来ない」の別の言い方は次の通りです。
- 大変申し訳ありませんが、今回は遠慮いたします。
- せっかくのお申し出ではございますが、辞退申し上げます。誠に申し訳ありません。
- せっかくのお誘いなのですが、別件がありますのでお気持ちだけ頂戴いたします。
「遠慮いたします」「辞退申し上げます」と、はっきりと断りは伝えるものの、相手への敬意がきちんと伝わる言い方を選ぶことが大切です。
「お気持ちだけ頂戴いたします」は遠回しな断りの表現ですが、相手からの誘いをやんわりと断るときに使える丁寧な言い方。
同じ「出来ない」を伝える場合でも、言葉の選び方によって相手に与える印象が随分変わります。
特にメールや文書になると表情や感情が読めない分直接的な表現がよりきつく感じられることがあります。
ビジネスシーンにおける人間関係のトラブル回避においても、「出来ない」の別の言い方を身につけ自分のものにすることはとても重要であると考えられます。
「出来ない」の敬語表現とは?「出来ません」は不適切?
「出来ない」を別の言い方にするなら敬語にして「出来ません」ではダメなの?と思われる方もいらっしゃると思います。
「出来ません」は動詞「できる」+丁寧語「ます」+未然形「ませ」+打消し助動詞「ん」で成り立つ正しい敬語ではあります。
しかし、言い方ひとつで相手に与える印象は大きく変わる可能性があります。
例えばカフェでの注文の際、
「カフェラテをミルク多めにしていただくことは出来ますか?」
「出来ません!」
意味的には全く問題のない言い方ですが、「絶対に無理です!」と言われているようであまり気分は良くありませんよね。
「申し訳ありませんが、ミルク多めの対応は致しかねます。」
「コーヒーの風味がより優しいカフェオレなどはいかがですか?」
より柔らかい言い方や代替案を提示していただけると印象がグンとアップします。
「出来ない」という事を伝えるという目的と合わせて、常に会話の相手を尊重する気持ちを持って言葉を選ぶ意識をしていくことが、ビジネスシーンにおける信頼関係の構築においても非常に役に立ちます。
「出来ない」の別の言い方にクッション言葉を添えよう!
ここまで、ビジネスシーンで役立つ「出来ない」の別の言い方について、具体的なシチュエーション別にご紹介してまいりましたが、具体例を見て何かお気付きになられたでしょうか?
そう、「出来ない」を別の言い方で使用する際の重要なポイント、『クッション言葉』です❗
クッション言葉とは、言葉と言葉の間や少し言いにくい言葉の前に置いてメッセージを柔らかい印象にしてくれる言葉のことです。
ビジネスシーンでは非常によく使われ、商談の場や社内でのコミュニケーションの場はもちろん、メールや文書でも活用されます。
よく使われるクッション言葉として、次のようなものが挙げられます。
- 大変恐れ入りますが
- 大変恐縮ですが
- お手数ですが
- 申し訳ございませんが
どれもよく耳にする言い回しですが、あるのとないのとでは大違い!
「出来ない」の別の言い方と上手く組み合わせて、柔らかいニュアンスで相手を尊重しながらも自分の意志や状況を上手く伝える工夫をしましょう。
「出来ない」の別の言い方は?ビジネスシーンで役立つ言葉の選び方のまとめ
ビジネスシーンにおいて「出来ない」という事を別の言い方で伝える言葉の選び方のポイントは以下の通りです。
- することが難しい場合は「難しく存じます」等要望に応えたい気持ちはありながらもこちらの力が及ばず申し訳ないというニュアンスを含めた言い方に。
- 自分ができないことを伝える場合は「致しかねます」のように「かねる」という婉曲表現を使って柔らかく伝える。
- 相手が出来ないことを伝える場合は「〇〇いただけません」のように申し訳ないという思いを込めた伝え方を。
- 誘いを断る場合は「遠慮いたします」等はっきりと断りは伝えるものの、相手への敬意がきちんと伝わる言い方で。
- 「出来ません」は間違いではないが直接的すぎる表現なのでできれば避けたい。より柔らかい別の言い方や代替案の提示を。
- 「出来ない」の別の言い方と合わせてクッション言葉を上手く使い、ビジネスにおける人間関係をより円滑に。
何気なく使ってしまう「出来ない」という言葉も、発信側と受信側でその印象が大きく違ってくることもあり、相手に不快な思いをさせたりその後の信頼関係に影響を与えることもあります。
たった一言で全てが水の泡…なんてことにならないためにも、特にビジネスシーンにおける「出来ない」の使い方に関しては、別のより柔らかいニュアンスの言い方をマスターし信頼を築き、円滑な人間関係を構築して仕事に活かしていきたいですね。
言葉は頭で理解しているだけではなかなかスムーズに出てきてくれないものです。
「出来ない」の別の言い方を普段から会話やメール、文書で意識的に使いながら、相手に良い印象を与えられる言葉の選び方を自分のものにしていきましょう!