少子化が進んでいるとはいえ、まだまだ赤ちゃんを望むお母さんは多いです。そして妊娠したお母さんは、元気な赤ちゃんを産みたいと願っています。
しかし残念ながら、流産や死産のこともありますし、無事に出産できても5%の赤ちゃんは何らかの先天異常や障害を持って生まれてきます。
今回の記事では、妊娠はできたのに心拍が確認できない場合の、その後はどうなるのかを解説していきます。
Contents
胎児の心拍が確認できない時はどんな経緯をたどるのか
妊娠に気がつくのは、次の生理が来ないに市販の妊娠検査薬を試すケースが多いですよね。
妊娠の開始は、最終生理(月経)が終わった時点から数えます。妊娠検査薬が陽性ならその時点で少なくとも妊娠4週以上になります。
妊娠したにもかかわらず、残念ながら早い時期に赤ちゃんが亡くなることを流産といいます。
ちなみに、妊娠の陽性反応は出たものの病院で確認する前の、超初期の時期に流産してしまった状態を「化学的流産」と呼びます。
検査薬が使われるようになってから認識されるようになったもので、それまでは気がつくことがなかった流産です。この場合は経過観察のみで大丈夫です。
胎嚢の超音波検査
多くの人は陽性反応が出たら産婦人科に行くことを考えるかと思いますが、産婦人科に行くとまず子宮内の胎嚢(たいのう)の超音波検査が行われます。
胎嚢は妊娠4週だと早すぎて、確認できない時があるからです。
妊娠5~6週頃に超音波検査を行うと、黒い塊のような胎嚢が子宮に確認できます。子宮内に胎嚢があれば、異所性妊娠(子宮外妊娠)ではありません。
しかし、妊娠6週を経過しても胎嚢が確認されなければ、正常な経過ではありません。
心拍動の確認
腟の中にプロープを入れる経腟法での超音波診断にて、妊娠6~7週になると胎児の心拍動が確認できます。
妊娠5週の頃はゆっくりであった胎児の心拍数は、成長とともに早くなっていきます。
胎児の心拍動が確認できると、正常妊娠という診断になります。
しかし胎嚢が確認されているにもかかわらず、妊娠6~7週になっても胎児の心拍動が確認できない場合は流産ということになります。
胎児の心拍が確認できない状態での流産の確率は約15〜18%ということです。
ただし普段から月経不順の場合は、更に1~2週間の経過してから、流産かどうかを判断する必要があります。
胎児の心拍が確認されると、9割の確率で妊娠は継続されます。なので心拍が確認されてから母子手帳交付の手続きに行きます。
心拍の確認から2週間経つと、胎児の体全体がはっきりしてくるため、妊娠週数と分娩予定日が決まります。
しかし、胎児の心拍が確認されたとしても、妊娠初期の頃はたまに流産になることがあります。
なお、胎児の心拍が確認された後の流産率は、2〜3%と言われています。妊娠12週を超えると、流産が起こる可能性はかなり低くなります。
胎児の心拍が確認できない時の流産の状態について
妊娠初期の頃に、少しの出血や腹痛を感じることがあります。正常の経過であっても起こるし、流産で起きる場合もあります。
しかし、少量の場合は病院でも有効な対処法がないため、夜間や時間外に少量の出血などがあっても救急外来まで行く必要はありません。
しかし、月経の時より出血量が多かったり、腹痛がひどい場合には救急外来で診察を受けましょう。
流産とは、妊娠22週(赤ちゃんがお母さんのお腹の外では生きていけない週数)以前に妊娠が終わることです。
流産とは、子宮内や子宮頸管(しきゅうけいかん)の状態から、次のように診断が分かれます。
流産の種類
①完全流産
②不全流産
③稽留(けいりゅう)流産
④進行流産
⑤切迫流産
では順に説明していきます。
完全流産とは
子宮の内容物がすべて自然に出てしまった状態のことです。
出血、腹痛等は治まってきている場合がほとんどです。経過観察をしたり、子宮収縮剤投与を追加して対処します。
不全流産とは
子宮内容物はだいぶ出ているものの、一部が子宮内に残っている状態です。出血や腹痛等が続いており、子宮内容除去手術を行うことになります。
稽留流産とは
稽留流産は、胎児が子宮内に残っている状態です。出血や腹痛などがないのに、超音波検査にて発育していないと診断されるものです。
超音波検査で心拍を確認できずに、稽留流産と診断できるのはCRL(胎児の頭からお尻までの長さ)が20mm以上(8週相当以上)の場合です。
胎児が自然に出てくるのを待つこともありますが、そのままだと強い腹痛と大量の出血になったり、感染症をひき起こすこともあります。
それらを予防する目的で、子宮内容除去手術が必要となります。
しかし稽留流産が疑われた場合は、1週間程経過を見てから再度診察をします。妊婦に自覚症状がないため、その診断は慎重に確認する必要があるからです。
進行流産とは
進行流産とは、子宮の収縮が始まっており、子宮の内容物が体外に出てきて、出血しながら流産が始まっている状態です。
切迫流産とは
胎児が子宮内に残っており、流産の寸前である状態です。①〜④の流産は妊娠の継続はできませんが、切迫流産は継続できる可能性があります。
切迫流産の場合は、トイレに行く以外は絶対安静にして過ごすようにしてください。場合によっては入院もして過ごします。
胎児の心拍が確認できない時のその後の処置とは
流産が確定してしまった場合、子宮内の内容物を取り出す手術をしなければいけません。
子宮内容除去術をせずに、自然に出てくるのを待つ場合もありますが、激しい腹痛などを伴うので手術を希望する人が多いです。
子宮内容除去術とは
妊娠12週未満の早期流産の場合に行われる「子宮内容除去術」とは、一体どんな手術なのでしょうか。
拡張した子宮頚管から吸引器を入れて、子宮内容物を体外に排出する手術です。
手術は15分程度で済むので、日帰りで行う場合もありますが、前日に子宮頸管を広げる処置を行うことがあり、その場合は1泊2日の入院をするケースもあります。
子宮内容除去術は健康保険の適用になり、自己負担額は3割です。費用は日帰りか入院かによりますし、病院の規模によっても変わります。
医療保険などに加入していれば、給付金の対象になる場合もあります。
流産後の女性は、血液型によって免疫グロブリン注射が必要な場合があります。次に妊娠した際、胎児の赤血球への影響を予防するためです。
手術を受けた際には、子宮内部に傷が生じることが多いため、子宮を回復させる必要があります。
退院翌日からシャワーは大丈夫ですが、入浴は医師の許可が出てからになります。手術後2~3日は、なるべく仕事を休みましょう。
流産してから1週間~10日以内で出血しなくなります。10日以上出血が続く場合は、診察を受けましょう。
トラブルは100日以内に治しておかないと、妊娠しにくい体になってしまいます。
手術後は月経を2、3回見送って、3ヶ月を待ってから妊娠するのが理想的です。いったん体の回復を待ちましょう。
子宮内容除去術のリスクとは
子宮内容除去術には、残念ながらリスクが存在します。
手術のリスク
①感染症
手術は清潔な環境で行われるが、まれに感染症の恐れがある。術後に発熱などの症状が見られた場合は、抗生剤の投与などで重症化を抑えることができる。
②頸管裂傷
出産未経験の人は、子宮頸を広げる頸管拡張処置を行うのだが、その際に頸管が傷つくことがある。しかし後遺症が出ることは少ない。
③子宮穿孔
術中に子宮内へ小さな穴をあけてしまうこと。子宮収縮薬などの投与で経過観測するが、大きい場合は開腹手術が必要になることもある。
④子宮内容遺残
手術を行っても子宮内容物が残る場合があり、出血が続いたり発熱や腹痛が出る。子宮収縮薬で内容物を完全に出すか、再手術が必要になることもある。
⑤子宮収縮不全
薬を使用しても子宮が収縮せず、大量出血が起こる場合。入院し適切な処置を行う。
流産後に気をつけること
先程述べたように、流産から100日間の体調管理はとても大切です。流産後に気をつけたい事としては以下の通りです。
流産後に気をつける事
①体を冷やさないこと
②よく眠ること
③無理をしないこと
流産の悲しみを忘れるため、仕事に没頭したりする女性もいらっしゃるかと思いますが、この時期は自分の体を第一に考えて、自分を癒やすようにしてください。
また妊娠をしたいなら冷えは大敵なので、腹巻きをしたりカイロを使ったりして子宮を温めるようにしましょう。
心拍が確認できない流産の原因と人工妊娠中絶手術
胎嚢があるにも関わらず心拍が確認できない場合や、妊娠22週までに胎児が亡くなるのが流産ですが、その原因とは何でしょうか?
早期流産の原因
妊娠12週までの流産(早期流産)の原因には、受精時に起きた染色体異常によるものが多いです。
受精卵の段階で流産が決まっているため、母体側に原因があるわけではありません。
染色体異常の90%は妊娠と確認される前に発育を終えてしまい、妊娠が確認されてもその90%は流産となり、最終的に出産されるのはわずか1%ほどになります。
つまり初期の流産は自然淘汰であり、自然淘汰される場合は発育しなかったり、心拍が停止してしまいます。
すると、その妊娠を終わらすために子宮収縮がおき、出血や腹痛などの流産の症状が出て進行していきます。
また、第一子以降の妊娠の場合、上の子の授乳が流産の原因になるのではと言われてきました。
確かに乳頭刺激は、子宮が収縮するオキシトシンの放出を促進しますが、研究の結果によると流産との関連性はないようです。
後期流産の原因
後期流産(妊娠12週以降)になると、母体側に原因が増えます。
その原因としては子宮の異常で、子宮筋腫・双角子宮・頚管無力症・子宮内感染などが考えられます。
風邪で流産することはほぼありませんが、インフルエンザといったウイルス感染は流産の原因になることもあります。
また甲状腺・糖尿病・膠原病などの病気も流産しやすくなります。
習慣流産とは
なお、流産を3回以上繰り返すことは「習慣流産」として注意が必要です。
流産は誰にでも起こりうる事ですが、3回以上繰り返す確率は1%程度です。
原因としては両親に何らかの疾患があり、子宮の形の異常や染色体異常があると言われていますので、一度検査してもらいましょう。
また母体年齢からみると、30歳未満では12%程度であるのに対し、45歳以上の流産率は50%以上にもなります。
人工妊娠中絶手術とは
人工妊娠中絶手術は、諸事情あり残念ながら、今回の妊娠を中断する場合に行う手術のことです。
母体保護法の関係で、人工妊娠中絶手術が受けられるのは妊娠22週未満までですが、妊娠初期(12週未満)とそれ以降(12〜22週未満)では手術方法が異なります。
妊娠初期に行うのは、先程説明した子宮内容除去術になります。
妊娠12週以降では、あらかじめ子宮口を開かせてから、子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし流産させます。
体に負担がかかるため、数日間の入院が必要になります。妊娠12週以後に中絶手術を受けた場合は役所に死産届を出して、胎児の埋葬許可証をもらう必要があります。
中絶手術は健康保険の適応にはならないことが多いです。妊娠12週以後の中絶手術は精神的なダメージだけでなく、経済的な負担も大きくなります。
中絶とは、産めないのならできるだけ早く決断した方が、ダメージが少なくて済むのです。
【心拍が確認できない場合のその後の処置】流産の原因とは何なのかのまとめ
- 妊娠の開始は最終月経から数え、妊娠検査薬で陽性になるのは早くても妊娠4週以降である
- 妊娠6週までに胎嚢が見えず、妊娠9週までに心拍動が確認出来なければ流産の可能性が高い
- 胎児の心拍が確認できない状態の流産率は15〜18%である
- 心拍を確認したあとに起こる流産は2〜3%なので、心拍を確認してももう少し油断できない
- 妊娠22週未満で赤ちゃんが亡くなることを流産と呼ぶ
- 激しい腹痛などを伴う流産と、超音波検査でわかる稽留流産などがある
- 流産が確定した場合、自然に流れるのを待つか、子宮内容除去術を受けて内容物を出すことになる
- 子宮内容除去術を受けたあと、次の妊娠は3ヶ月を空けて、子宮の回復を待ったほうが良い
- 子宮内容除去術は健康保険が効くものの、やはりリスクがある
- 妊娠12週までの初期流産は受精時の染色体異常によるもので、母体のせいではない
- 12週以降の流産は、母体側の原因が増えて、子宮の異常や自身の病気のためになる
- 流産が3回以上続くことを習慣流産と言い、検査が必要となる
- 人工妊娠中絶手術をするのなら、母体のためにも早めに決断したほうが良い
今回の記事では、心拍が確認できないその後の処置について解説しました。
流産経験をお持ちの人は、私が思っていたよりずっと多く、出産することは本当に奇跡なのだと改めて感じました。
突然流産になって悲しむお母さんのお力に、この記事がなれたなら幸いです。