新卒入社、転職での中途採用いずれの場合も、給与条件は気になるところです。
採用情報の中で「月給〇〇円」という表記に交じって「年俸△△円」という表記を見たことはありませんか?
年俸制というと、外資系企業やスポーツ選手など特殊な業種の話というイメージがあります。
日本で多いのは月給制ですが、最近は日本でも海外同様、成果主義で年俸制を導入する企業や職種が増えてきています。
月々一定の金額が支払われる月給制は馴染みがあっても、年俸制の仕組みは少しイメージし辛い方も多いのではないでしょうか。
年俸制のメリットデメリットや、残業代、賞与や税金について解説します!
Contents
年俸制のメリットデメリットを知りたい!
年俸制とは
まず、年俸制の定義は下記となっています。
年俸制は本来労働時間に関係なく、労働者の成果・業績に応じて賃金額を決定しようとする賃金制度
引用:厚生労働省東京労働局
実際の金額については、企業と従業員が契約内容や賃金など条件面を話し合った上で1年単位で決定した給与が支給、となります。
但し、一括で全額を支払いではなく、労働基準法第24条で定められる賃金支払い5原則に基づいて
- 年俸を12分割して毎月1/12の金額ずつ支給
- 年俸を14分割して12回分は毎月の給与として支給、残り2回分を賞与扱いで支給
とするケースが多いです。
また、年俸制でも欠勤控除などで、給与額が減額になるケースがあります。
労働基準法では、賃金の支払いに関し「全額払」の原則が定められており、賃金は全額支払わなくてはなりません。しかし、労働者自身の都合による欠勤、遅刻、早退に対して、その賃金を支払うか否かは当事者の取り決めによりますので、欠勤等には賃金を支払わないと決めた場合には、賃金債権そのものが生じないのであって、それは年俸制においても同じことです。
引用:厚生労働省東京労働局
事前に、就業規則(賃金規定)について確認しておきましょう。
年俸制と月給制の違い
給与を受け取る従業員側からすると、年俸制でも月給制でも毎月給与が支払われるため、あまり違いがないように見えます。
しかし、支払う企業側には明確な違いがあります。それは人事評価と連動させやすいという点です。この点が外資系企業で年俸制が採用される理由の一つです。
日本では長く終身雇用が前提となっていたため、仕事の成果より勤続年数や勤務態度などが給与決定の要素として重視されていた背景があります。
その一方、海外では成果主義が主流です。
成果主義に基づいて給与を決めるためには、半年から1年のタイミングで実施される人事考課と時期や頻度を合わせる方が、実績と給与にぶれが出ないため都合が良いというのがその理由です。
年俸制のメリット
年俸制と月給制を比較した場合の大きな違いは、年間で支給される金額が確定している点でしょう。
給与を受ける従業員にとって、年俸制のメリットは、長期の支払い計画が立てやすい点です。
自分の手元に入る年間の給与が事前に把握できるため、ローンの計画などが立てやすくなります。
もし、事前に期待されていた成果をあげることができなくても、原則、その年度に支払われる給与は確定しています。
1年間の収入見通しが事前に立つことは、大きなメリットです。
住宅や車の購入、スキルアップのためのスクール受講など、ある程度まとまった資金が必要な買物・自己投資がしやすくなります。
なお、成果主義と年俸制が連動している場合、年功序列ではなく実績次第で大きな報酬を得ることも可能です。そのため、年次の浅い従業員にも公平にチャンスがあると言えます。
年俸制のデメリット
年俸制のデメリットは、活躍しても直近の賞与金額が変わらない点です。その活躍が給与に反映されるのは翌年以降となります。
個人が努力をした時期と、その結果が反映された報酬を受け取るまでにタイムラグが生じます。
また、勤続年数に関わらず成果によって毎年報酬が見直されるため、成果が低かった場合は翌年の年俸が大幅に下がるというリスクも考えられます。
このように成果主義が強い年俸制では、給与は常に右肩上がりとはなりません。
年俸制の残業代や賞与は?税金は?
年俸制の場合残業代は出るの?
大前提として、年俸制であっても残業代は発生します。
年俸制は本来労働時間に関係なく、労働者の成果・業績に応じて賃金額を決定しようとする賃金制度です。しかしながら、労働基準法では労働時間の長さをとらえて規制をしていますので、年俸制を導入した場合にも、実際の労働時間が法定労働時間を超えれば、時間外手当を支払わなければならないことになります。
引用:厚生労働省東京労働局
但し、事前に取り決めた年俸額を超えた残業代を支給する必要がないケースもあります。それは下記のようなケースです。
- 固定残業代(みなし残業代)が支給されており、実際の残業時間が固定残業時間を超過していない場合
- 管理監督者や機密事務取扱者の場合
- 高度プロフェッショナル制度適用となっている場合
厚生労働省 東京労働局の公式サイトでも、下記のように記載されています。
労働基準法では、管理監督者、機密事務取扱者については、労働時間に関する規制がありませんので、労働時間が法定時間を超えても割増賃金を支払う必要はないとされています。また、裁量労働制などのみなし労働時間制の場合には、実際の労働時間に関係なく、みなし時間に応じた年俸が設定されていればよいことになります。
年俸制は労働時間とそれに応じた賃金という制度となじまないものですから、年俸制を適用する労働者は上記の二つに該当する職種が適切であると思われます。一般職員に年俸制を適用することは不可能ではありませんが、年俸制を適用する場合、実際の労働時間が法定労働時間を超えれば、時間外手当を支払わなければなりません。
引用:厚生労働省東京労働局
年俸制の場合賞与は出るの?
まず、大前提として賞与(ボーナス)は給与とは扱いが異なります。
年俸制であってもなくても、原則は、企業が従業員へ賞与を支払う法律上の義務はありません。
月給制導入企業で、業績悪化した場合などに従業員への賞与支給を取りやめたり、賞与金額が減額になったりするのはそのためです。
ただし、元々の年俸額を14分割~18分割など、12回+αでの支給にしている場合は別扱いです。
一般的には賞与と同じ認識をされていることが多いのですが、正しくは年俸の一部となるため、企業の業績が悪化した場合も、あらかじめ契約で定められた金額を受け取る権利があります。
事前の取り決め時に確認しておきましょう。
年俸制の税金
一般的に税金扱いになる費用としては、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料という社会保険と雇用保険、所得税などがあります。
年俸制の税金支払いについて「こうすれば必ず得になる」という万人向けの方法はありません。
年俸をどのように受け取るか、という事前の契約内容によって税金の支払い方法も変わるためです。
賞与のありなしによる違いを簡単に解説します。
年俸総額を12分割して、毎月受け取る場合
社会保険料の毎月の支払額が少なくなり、毎月の手取り金額は多くなります。
ただし社会保険料が少なくなる分、将来受け取る年金額が減るため、その点は注意が必要です。
年俸総額を14分割〜18分割して、一部を賞与で受け取る場合
年俸総額を12分割する場合に比べて、社会保険料が高くなるため、将来受け取る年金額が高くなります。
ただし、毎月の手取り金額は少なくなります。
一般的に、ある程度蓄えがあって月々動かせる金額を多くしたい場合には12分割、将来受け取る年金額を多くしたい場合は14分割〜18分割での支給が向いている…とされています。
年俸制と月給制おトクなのはどっち?
ここまで、年俸制の場合の全般的なメリットデメリットを解説してきました。年俸制と月給制どちらがおトクなのか、ですが…万人に共通の回答はありません。
転職する場合、初年度については年俸制の方が金額が下がるリスクは少なくなります。
ただし、2年目以降に関しては、想定される年収額が同じなら年俸制でも月給制でも年収自体に差はありません。判断基準としては、どちらが自分のモチベーションをより保ちやすいか、という点です。
毎年成果を出せる自信があり、結果によっては減俸となることも受け入れられる方には、年俸制が好ましいと感じられるのではないでしょうか。
一方、一つの企業で長く勤務していきたい方には、月給制の方が直近の成果も反映されやすくモチベーションが保ちやすいと言えます。
年俸制のメリットには税金が関係している?残業代や賞与はどうなる?のまとめ
- 年俸制は本来労働時間に関係なく、労働者の成果・業績に応じて賃金額を決定しようとする賃金制度。
- 年俸制は12分割して毎月1/12ずつ支給と、14~18分割して12回分を給与、残りを賞与扱いで支給するケースが多い。
- 年俸制のメリットは、年間で支給される金額が確定している点。そのためローンなどの計画も立てやすい。
- 年俸制のデメリットは、活躍しても直近の賞与に反映されない点。
- 年俸制であっても原則、残業代は発生する。
- 原則、年俸制、月給制に関わらず、企業が従業員へ賞与を支払う法律上の義務はない。
- 元々の年俸額を14〜18分割など12回+αでの支給にしている場合、会社自体の業績に関わらず、あらかじめ契約で定められた金額を受け取る権利がある。
- 税金は、年俸の支給回数によって支払い額が変わる。
終身雇用が当たり前ではなくなっている現代、年俸制についても、スポーツ選手など特殊な職業だけの話ではなくなってきました。
年俸制月給制、どちらにもメリットデメリットはあります。
将来に向けたお金の使い方や管理方法、仕事への取り組み方などを考慮にいれた上で、どちらの給与形態が良いのか、またはどちらでも良いのかを考える必要があります。
自分自身の今後の展望、働き方を定めた上で見極めておくと入社後に「イメージしていた年収とは違う」ということが避けられるでしょう。