CADとは「Computer Aided Design」の略称で、コンピューターで製図や図面の管理などが行える便利なソフトウェアです。
従来は手書きで技術と経験が求められてきた製図が、CADを活用することでそういった手間が省け、技術と操作を覚えれば、誰でも図面が描けるようになりました。
Jw_cadは、Windowsで動作する2D(2次元)汎用CADソフトウェアで、基本全て無料で商用利用が可能な数少ないCADソフトとなっています。
ライセンス購入や、レンタル、サブスクリプションと、利用するためにかなりの高額費用が掛かるCADソフトが誰でも気軽にインストールし、利用が出来ます。
ただ、フリーソフトであるが故のデメリットもあります。
Jw_cadには、どのようなデメリットがあるのでしょうか?探っていきましょう!
Contents
フリーソフト・Jw_cadのデメリットとは
引用:Jw_cadのページ
デメリット①機能を使いこなすのが困難である
Jw_cadは、フリーソフトでありながら、扉や窓のような建具や設備をコマンドを利用して簡単に設計図が作図できる機能。
2次元の図に高さ情報を入力することにより、アイソメ図といって立体を斜めから見た視点で表示した図の作図ができる2.5D機能。
その他、建物を建てる際に建築基準法に違反していないか検討するために必要な日影図の作成機能などの建築設計に特化した、高度な機能も備えています。
しかしながら、これらの機能をまったくの初心者が使いこなすことは容易ではないのが、デメリットの1つ目として挙げられます。
有償のソフトであれば、提供企業からソフトの導入方法や基礎的な使い方のアドバイスや無料講座、電話やリモートにてトラブルシューティングのサポートや、アップデートの際の機能のアナウンス等、万全の体制があるのが殆どです。
Jw_cadは、公式ホームページも実にシンプルで、相談室や情報交換室のスレッドはありますが、その他、ユーザーが公開しているyoutubeや、書籍を購入したりと自分で情報を探したり、若しくは有料の外部CAD講習を受講する必要があるでしょう。
デメリット②3次元の製図に対応していない
2つめのデメリットとしては、Jw_cadは3次元の製図に対応していないことです。3次元の製図は2次元よりも仕上がりの形をイメージしやすいというメリットがあります。
そのことから、CADは主に建築・土木業界のほか、家具・インテリア業界、製造業界、アパレル・ジュエリー業界、福祉業界にて使用されていますが、その殆どの業界で現在の主流は3次元での製図になっています。
デメリット③他のCADへの応用ができにくい
3つめのデメリットとしては、他のCADにはない独自の操作方法や拡張性も低いため、建築設計以外の多様な業務には対応が難しく、他のCADへの応用も不向きになっています。
機能としては高度なものもありますが、Jw_cadならではの「クロックメニュー」により、マウスをコマンドボタンまで動かす必要が無くなり、スピーディーに手書きのような作図が可能になっています。
そのため、Jw_cadは特に国内の2次元の建築CADとしては、Autodesk社のAutoCADに次ぐシェアを持っているとも言えます。
CADの種類は大きく分けると2つある
2D CAD(2次元 CAD)と3D CAD(3次元 CAD)
2D CADは、平面図や詳細図など「縦」✕「横」の2次元で立体を表現する方法で、線や円弧を使用し、断面図を作成して製図に応用します。
手書きで製図していたやり方をそのままコンピュータ上で行うため、実際の製図操作を覚えやすいというメリットがあります。
しかし、作図した断面図をその断面以外の別の角度から見ることができません。そのため、製品全体の形状を正確に把握するには、想像力や空間の把握能力が必要になってきます。
3D CADは、球や直方体などを使用して建物などを立体的に表現するCADです。
完成図などのイメージ把握がしやすく、さまざまな角度から位置関係を確認することが可能なため、設計や検討、プレゼンテーションの時間が短縮できるメリットがあります。
また、立体イメージから平面図を自動で作成することも可能です。
しかし、3D CADツールを動かすには、大量のメモリ領域や高い処理能力などハイスペックなコンピュータが必要で、高度な操作も要求される傾向にあります。
また、2D CADとは異なり、無料で公開されているシステムがあまりないため、導入するには高いコストがかかります。
汎用CADと専用CAD
汎用CADは特定の分野に限定せず、どの分野でも使える汎用性に優れたCADです。
反面、搭載されている機能が多く、製図の操作を習得するまでには時間がかかってしまう場合があります。
最近では汎用CADにアプリケーションなどを追加し、専用CADのような機能を付加できるソフトも多く出回っています。
専用CADは、建築、土木、配管、電気工事など、それぞれの業務での製図に特化したCADです。それぞれの目的に合わせて、建築用CADや機械用CAD、土木用CAD、電気用CAD、アパレルCADなどと呼ばれます。
建築CADであれば窓や階段、建築設備であれば配線や配管などといった図形が簡単に挿入できるような便利機能が搭載されています。
設計製図ができる点は一般的なCADと同様ですが、独自の操作感や各業界でよく使われる機能があらかじめ搭載されており、作業効率を向上させています。
Jw_cadは、2D汎用CADなりますが、建築設計に特化した機能が多数搭載されています。
よく比較の対象となる、Autodesk社のAutoCADLTも同様に2D汎用CADとして高いシェアを誇っていましたが、新規販売が2021年6月7日終了し、AutoCADに引き継がれました。
新しくなったAutoCADは、従来のLTソフトの内容に3Dモデリング機能を追加された内容になっています。新しく発売されたAutoCAD Plus は、従来のAutoCADと同機能製品となっています。
そのため、Jw_CADは3次元製図に対応していない数少ないCADとなってしまいました。
Jw_CADの歴史はなんと24年間ずっとフリーソフト
Jw_cadは、MS-DOS版の2次元CADとして、建築設計現場でお仕事をされていた清水治郎氏、田中善文氏、岡野輔仁氏の3名により開発されました。
最初は線が引ける、削除できる、複写できるといった基本機能のみが搭載され、製図板の延長としての機能を目指し開発されていたようです。
その後、多くの利用者の意見を取り入れた「Jw_cad」の原型が建築フォーラム(FARCHI)と呼ばれるポータルサイトにアップロードされ、誰でも自由に使えるようになりました。
建築フォーラム内では機能や操作性などについて活発な意見が交わされ、それに合わせてプログラムが更新されることでますます進化を遂げます。
1993年末には「建築知識」の別冊特集号にJw_cadを収録したムックが4万部の出荷を記録しました。
1993年はWindows3.1の日本語版が発売された年でもあり、世の中のパソコンはWindows対応へと移り変わっていきます。
それに伴い、Jw_cadも1997年からはWindows版の初期バージョンがリリースされます。
このWindows版のJw_cadも、掲示板などで広くユーザーの意見などを取り入れながら改良を重ね、2021年5月18日にはVersion 8.24a がリリースされています(2022年2月現在の最新バージョン)
Jw_cadは、Windows版の初期バージョンの発表から24年間も、このようにずっとフリーソフトとしてユーザーの意見を取り入れながら、リリースされ続けているのです!
Jw_cadのデメリットは?CADユーザーなら知っておきたい知識のまとめ
ポイント
- Jw_cadはフリーソフトのため、ソフトの導入方法や基礎的な使い方、トラブルシューティングなどのサポート体制がない。
- 自分で情報サイト等で調べたり、書籍を購入したりする必要があり、全くの初心者には使いにくい。
- Jw_cad は3次元の製図に対応しておらず、現在3次元の製図がほほ主流になっているため、対応できない業務が出てきたり、同じようなパフォーマンスが不可能である。
- Jw_cadは、独自の操作方法で、拡張性も低いため建築設計以外の多様な業務への対応が難しい。
Jw_cadは、以上のようなデメリットはありつつも、長い歴史を誇り、CAD現場では、一度は聞いたことがあるフリーソフトです。
3D CADが主流にはなってきていますが、そこまでの規模ではない業務内容の中小企業や高額のCAD導入コスト負担が難しい個人建築事務所などでJw_CADは今でも活躍しています。
私の知り合いが務める役所のCAD業務などでも、未だJw_cadを使用していると聞いていますし、CAD求人などの使用ソフト条件を調べてもまだまだ活躍の場はありそうです。
有償ソフトに比べると、バージョンアップの歩みもゆっくりですが、もしJw_cadが劇的に進化したら、有償のソフトになってしまうかもしれません!