社会における女性の活躍推進に関する法律「女性活躍推進法」が国会で成立したのは、2015年8月でした。
一方で、流行語大賞でトップテン入りする程、物議を醸した「保育園落ちた日本死ね!」が投稿されたのは、翌年の2016年2月です。
[st-kaiwa6]あれから5年以上経ったけど、女性が活躍できる社会になってないわよ!![/st-kaiwa6]
残念ながら、現在も女性を取り巻く環境が変わったとは言い難いです。何故日本では女性がなかなか活躍できないのか、その問題点と解決方法を考えていきます。
Contents
女性が社会で活躍できない4つの問題点と女性活躍推進法
女性の就業率が出産子育て期にガクンと下がってしまう「M字カーブ」。
2019年に女性の就業者数が3,000万人を突破し、そのM字カーブが解消したのではと言われてきましたが、また元に戻りつつあります。
実は、女性の就業者のうち半数以上が非正規労働者なのです。年齢が上がるにつれて女性の非正規雇用の割合は上昇しています。
冒頭に紹介した「女性活躍推進法」は、働きたい女性が活躍できる労働環境の整備を企業に義務付ける、10年間の時限立法として施行されました。
これまでは努力義務だった「101人以上、300人以下の労働者を抱える企業」についても、労働環境の整備が求められるようになったのです。
職場環境の整備は進んでいますが、まだ全ての会社において「女性が働きやすい会社」とは言えない現状があります。
日本社会では女性がずっと働き続け、活躍することが、何故こんなにも難しいのでしょうか?その問題点は次の4つが考えられます。
[st-midasibox title=”女性が活躍できない4つの問題点” fontawesome=”fa-check-circle faa-ring animated” bordercolor=”#FFC107″ color=”” bgcolor=”#FFFDE7″ borderwidth=”” borderradius=”5″ titleweight=”bold” myclass=””]
①キャリアが継続できない
②ロールモデルや目標が持てない
③時間が足りず両立に悩む
④女性社員を長期的に活かすビジョンがない[/st-midasibox]
ではそれぞれの問題点について、詳しく解説していきましょう。
女性が社会で活躍できない問題点①キャリアが継続できない
問題点①としては「キャリアが継続できない」ことです。
日本では性別の分業意識が強く、家事・育児・介護負担の多くは女性が負わざるを得ません。
そのため残業付きのフルタイム就業ができないと、働き方の選択肢は非正規労働に限られてしまいます。
たとえ出産後に仕事に復帰できたとしても、キャリア形成を諦めてしまう「マミートラック」に陥り、退職してしまう女性が多いのです。
そして職を失った女性の再就職先は、ほぼ非正規雇用になってしまいます。女性の雇用は増えたものの、結果的には非正規労働者という結果になっているのです。
川下り型キャリアで考える
キャリアに対する考え方は「山登り型」と「川下り型」の2種類あります。
【山登り型キャリア】
将来の目標を定め、実現に向けて突き進むキャリアの積み方です。決めた道に対しては悩みを持ちにくい反面、目標に到達できなかった時に、挫折しやすくなります。
【川下り型キャリア】
どんな仕事に対しても、機会は最大限に活用するキャリアの積み方です。全てに意味があるという考え方なので、どんな仕事に対しても、道が閉ざされた時にも挫折しにくいのです。
女性の場合において、出産などでキャリアの積み方は変化するものの、目の前のチャレンジを積み重ねて築いていく(川下り型キャリア)と考えることが大切です。
女性が社会で活躍できない問題点②ロールモデルや目標を持てない
問題点②としては「ロールモデルや目標が持てない」ことです。
男性の場合、その職場に社長や役員などのロールモデルが既に存在するため、その役職になるという夢も描きやすく、キャリアを長期的に考えることができます。
しかし日本の場合、企業における女性役員の比率はわずか1.1%しかありません。
出産後も順調にキャリアを上げていった、女性のロールモデルが圧倒的に足りないので、目標が持てないのです。
目標が持てないと、その不安により今の仕事に集中ができず、成長ができないといった負のサイクルになります。
またそもそも役職に魅力を感じず、担うことに不安を感じるといった理由で、働きやすい環境での現状維持か、退職を考えてしまいます。
その結果、ロールモデルが育たないため、いつまでたっても女性役員は増えないというわけです。
女性役員比率・第1位のノルウェーと比較すると日本は30分の1以下であり、いかに日本の女性役員が少ないかが分かります。
決定権を持つ女性役員が少ないために、女性活躍の重要性を、男性に認識されないという悪循環に陥っています。
役職を魅力的に思えるためには
ロールモデルを増やすには、数少ない女性役員が役職の魅力を伝えると共に、会社も女性役員として実現できることを伝えることです。
役員になることも、選択肢の1つとして考えられるように、論理思考スキルと組織視点の視界を身に着けさせることが重要です。
そのためには外部研修や、女性役員のネットワークなどに参加してロールモデルを外にも見つけられるきっかけを得ることが、視野を広げる機会になります。
女性が社会で活躍できない問題点③時間が足りず両立に悩む
問題点③としては「時間が足りず両立に悩む」ことです。
育児と仕事を両立するのは、圧倒的に時間がなくて本当にキツく大変なことです。
時間が足りないゆえに、スケジュール通りに仕事が終わらないというジレンマを抱えながら仕事をせざるを得ません。
保育園や保育士が不足し、待機児童問題は続いています。子どもを預けられなければ、女性が働く時間を手に入れることは難しいのです。
[st-kaiwa6]子ども生んで仕事して、税金も払ってやるってのに日本は何が不満なんだ!!って書いた人の気持ち、分かるわぁ…[/st-kaiwa6]
保育問題がどうしても解決できなくて、料金が高いベビーシッターを利用ながら働く母親もいますが、これではなんの為に働いているのか分からなくなります。
それゆえに、仕事との両立に悩み、出産で半数以上の女性が辞めているわけです。
出産前マネジメントとは
妊娠が分かってから、復職後のことや今後のキャリアを考えるのではなく、出産前から考えておくことが必要です。
女性は独身時代が一番仕事ができるからこそ、いかに独身時代に周囲の信頼を得ておくかで復帰後が楽になります。
復帰してほしいと思わせる人材に、なろうと努力する姿勢が女性にも必要です。
物理的に時間を増やすには
女性が、家事や育児から少しでも楽になるよう、アウトソーシングのサポートを会社側がする必要性が出てきています。
[st-kaiwa6]会社がベビーシッター代をサポートしてくれるのなら、早く復職したいけどね…[/st-kaiwa6]
また社内のイントラネットに、自宅からアクセスできるようにすることも有効です。週に何日かでも、出勤せずに自宅で仕事ができれば、通勤時間分の時間が増えます。
育休中でも、テレワークでできる業務に従事することで、復職時の不安を軽減でき、仕事に復帰することがスムーズにできるでしょう。
男性の育児休業の取得
厚生労働省によると、2019(令和元)年度は83.0%の女性が育児休業を取得しています。一方で、男性の育児休業取得率はわずか7.5%と依然低い状態です。
男性が休むことで女性が楽に育児ができるようになるかは、家事のスキルによっては難しいかもしれません。
しかし、男性が育児休業を取ることは、女性が育児に奮闘している姿を見て、女性の想いを傾聴するだけでも全然違うと思います。
女性が社会で活躍できない問題点④女性社員を長期的に活かすビジョンがない
問題点④は「女性社員を長期的に活かすビジョンがない」ことです。
女性が輝ける会社と言うと、育児と仕事の両立をイメージすることが多いです。
非正規雇用まで含めると、中高年女性が半数を占めるというのに、20~30代女性にしか社会の目が向けられていません。
[st-kaiwa6]そのくせ誰も得していないという状態だよね…[/st-kaiwa6]
結婚・育児・仕事をどれも求める生き方が理想だと決めつけられて、独身女性や産まなかった女性は肩身の狭い思いをしています。
女性の中にも、キャリア思考でバリバリ働きたい人もいれば、家庭を最優先させたい人もいるのに、そんな価値観は尊重されていないのです。
女性のライフイベントに合わせて、時短や在宅のような勤務条件を整えることは、退職を阻止する効果があり、優秀な人材を残すことにつながります。
また将来AIに仕事を奪われるような仕事をさせられている女性だと、仕事へのモチベーションも上がらないのも問題です。
上司の女性社員への対応改善
女性は「一方的な指示」を好まないので、女性に働いてもらうためには、上司から積極的に自己開示をして、女性部下との信頼関係を築くことが重要です。
また女性が求めているものは「アドバイス」よりも「共感」です。女性には男性よりも、ライフイベントに伴うジレンマが生じやすいのです。
それを理解しているか、してないかで女性の部下との関係構築に大きな差が出てきます。
上司は傾聴のスキルを磨き、女性部下の気持ちに寄り添うことができれば「自分の存在が認められている」という安心感を与えられるでしょう。
自分らしい働き方を考える
時短勤務だと、ルーティンワークしか任せてもらえないと嘆く女性は多いです。
どんな仕事でもやりがいを得ようと思ったら「自分はどう働きたいか」を考える必要があります。
「長く働きたい」など、自分が譲ることのできない価値観を明確にすることで、働く環境が変わったとしても、仕事のやりがいを得ることが可能となります。
[st-kaiwa6]働くのはお金のために決まってるじゃない!![/st-kaiwa6]
その価値観は「お金のため」でも良いのです。終身雇用制度が崩壊し、自分でキャリアを形成しなければ、充実した「人生100年時代」を送れなくなってきています。
「お金」という現実的な問題は、仕事へのモチベーションが下がっている女性社員にとっても、自らのキャリアを考えるきっかけとなります。
女性が社会で活躍できない問題点を解決させるヒントとは
ここまで、日本社会で女性が活躍できない問題点を考えてきましたが、これは早急に解決すべき問題です。
なぜなら2025年には「団塊の世代」が、一斉に75歳以上の後期高齢者になるという「2025年の崖」が迫っているからです。
国民の4人に1人が後期高齢者という、超高齢社会が到来するという「2025年の崖」は、介護を誰が担うのかという、他人事で済ませられない問題なのです。
一方で、少子高齢化から労働者が不足することは確実なので、女性の社会貢献は絶対に必要です。
これまでは男性目線で作っていた製品も、女性のアイデアが必要とされてくるでしょう。
女性の感性を追加することで、新たなサービスや価値が出てくることが考えられるからです。
ダイバーシティを目指す
全ての女性が活躍できる会社というのは、誰もが活躍できる会社であるとも言えます。
そこは働きやすい制度が整っているだけでなく、会社全体でフォローしあえる環境が根付いているからです。
これから本格的な介護が始まる上に、就労者自身が病気を抱えながらでも仕事をすることが、当然の社会になると予想されます。
女性だけでなく皆が活躍して、皆に能力発揮の機会が与えられ、多様な働き方が認められる「ダイバーシティ」のある会社を目指すべきです。
日本社会は、慢性的な労働者不足に陥っていおり、女性以外にも高齢者や外国人、障がい者など、多様な人材の雇用を増やす必要があります。
すでに女性の活躍推進法を真剣に取り組んでいる会社は、人材獲得における優位性が期待できるでしょう。
日本が国際社会で回復するには、皆が働きながらでも、子供を生み育て、介護しやすい社会になることなのです。
【女性が社会で活躍できない問題点】ダイバーシティを目指すにはのまとめ
- 日本社会における女性の活躍を阻害する問題点は4つ考えられる
- 女性労働者のうち、半数が非正規雇用である
- 問題点①として、育児や介護を担うのがまだまだ女性であるため、キャリアの継続ができないこと
- 問題点②として、育児をしながら働き続けたロールモデルが少ないために、目標を持ちにくいこと
- 問題点③として、ワーキングマザーは圧倒的に時間が足りず、育児と会社の両立に悩んでしまうこと
- 問題点④として、若い世代ばかり見ていて、女性社員を長期的に活かすビジョンがないこと
- 2025年には団塊の世代が75歳以上になる「2025年の崖」が迫っており、急速な問題解決が必要である
- 女性が働きやすい会社は、制度が整っていて皆が働きやすい会社であるとも言える
- 女性だけでなく、全ての人が活躍できるダイバーシティの概念を導入すべきである
今回の記事は、日本社会において女性が活躍できない問題点の提起と、その解決策について解説してみました。
女性が働きやすい会社は、皆が働きやすい会社であり、そのための制度整備を考えてほしいと共に、女性自身もずっと働き続ける選択を持つ必要があると強く感じました。
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