死装束は亡くなった方に着せる衣装のこと。
実は、死装束の着物の着せ方や帯の結び方に決まりがあるのを知っていますか?宗教によっては男女で着せる死装束が違うこともあります。
今回は、そんな死装束の帯の結び方や着せ方、種類について紹介します。
Contents
死装束の着物の帯の結び方は?
引用:Amazon
着物の浴衣の帯を結んだことはありますか?私は仕事柄、亡くなった方に浴衣を着せて帯を結ぶことがあります。その時に、結ぶ手順に悩むことがあります。
着物に限らず、リボンを結んだ時に「縦結びは縁起が悪いよ!」と注意された経験はありませんか??
死装束の帯は縦結び!
死装束の帯の基本は縦結びです。
縦結びとは、通常の蝶結びとは異なり、結んだ紐の輪や紐の先が根元の紐と垂直になるように結ぶ結び方です。
お菓子や洋服のリボンを結ぶときにうっかり縦結びになってしまい、親御さんに注意された経験がある方も多いのではないでしょうか?
縦結びは、死装束の時に使う結び方のため通常は使いません。
なぜ死装束は縦結びかというと、今の世界と死の世界を分けるという「逆さ事」という考え方によるためです。「逆さ事」は宗教的な作法ではなく、伝統的な風習として日本で根付いた知恵によるものです。
縦結びの結び方
日常生活であえて縦結びにすることは少ないと思います。そのため、どうやったら縦結びになるんだろう、思う方も多いと思います。今回は、縦結びの結び方について紹介します。
- 襟と同じ方を上にする
- 上になっている方の紐を下から上に引き抜く
- 自然な方向に締める
- 上にある紐で輪を作る
- 下にある紐を上に上げて輪の状態を作り、引き抜く
- 縦結びの完成
死装束の着物の着せ方は?
「右前」「左前」という言葉を聞いたことがありますか?
通常の着物は「右前」、死装束は「左前」にして着ます。つまりどうやって着せるのか、説明しますね。
死装束の着物は左前に着る
「左前」とは、「(自分から見て)、左の襟が前にきている」着方のことです。
「左前」の「前」は「手前」「先に重ねる」という意味があります。つまり、自分からみて、左→右の順に重ねます。
この場合、着物の襟合わせは「右の襟が上」の状態です。
私は看護師のため、浴衣を相手に着せることが多いです。そのため、「左前」は相手に着せるときに、自分の左手が上になるという風に覚えました。
その他、自分で着るときに「左襟を先に合わせるのが左前」という覚え方でもいいと思います。
覚えやすいように覚えて、間違えないようにしてくださいね。もちろん、普段の着物は「右前」ですよ!
死装束は何で左前に着るの?
死装束を左前にして着る理由は3つあります。
- 逆さ事の考え方によるもの
縦結びと同じように、普段の生活とは反対のことをするという「逆さ事」という考え方からきています。 - 上流階級の方は左前で着物を着ていたから
奈良時代の上流階級の方は着物を左前に着ていました。一般庶民は着物を右前に着ていました。
そのため、「最後の旅立ちは高貴な方と同じような姿で送ってあげたい」という思いから、死装束を左前で着せるようになったと言われています。 - お釈迦様と同じ形にするため
お釈迦様の入滅際に、つまり亡くなる時に着物を左前にして着ていたという説があります。そこから、お釈迦様を真似て左前で着せるようになったと言われています。
ただし、浄土真宗は逆さ事を嫌うので生前と同じく、右前で着せます。間違えないように気を付けましょう。
死装束の着物は男女で変わるの?
死装束の着物は男女で変わる場合があります。死装束は宗教ごとにどんな着物・服を着るのか変わってきます。
そもそも死装束とは、納棺時に亡くなった方が着る衣装のことです。
死装束の種類について紹介しつつ、男女での違いについても説明しますね。
死装束の種類
経帷子(きょうかたびら)
引用:楽天市場
仏教徒が亡くなった時に着る独自の白い着物のことです。仏教の教えでは、亡くなった方は浄土の旅に出ると考えられており、その旅支度として経帷子を用意します。男女の違いはありません。
帷子は単(ひとえ)で仕立てられた裏地のない着物のことを意味します。その帷子に亡くなった方の極楽浄土を願う意味を込めてお経が書かれることがあり、経帷子と呼ばれるようになりました。
経帷子は、「結び目をつけない」「玉止めをしない」「返し縫いをしない」「一人だけでは作らない」など仕立て方も特徴的です。今でも、出来るだけこれらの決まりは守られて作られています。
また、経帷子を早めに用意しておくと長生きできるという言い伝えがあるため、元気なうちに用意しておく方もいらっしゃいます。
ただし、浄土真宗では亡くなった方はすぐに極楽浄土に導かれると考えられているため、旅支度の必要がありません。
そのため、死装束ではなく着物を右前に着せることが多く、経帷子を着用しても右前に着せるのが一般的です。
神衣(かむい・しんい)
引用:株式会社ヤマト
神式の場合でも着物を着せますが、神衣と呼ばれるものを着せ、これは男女で異なります。
男性の場合は、白い狩衣(かりぎむ)と烏帽子(えぼし)を身に着け、笏(しゃく)を持たせます。
女性の場合は白い小袿(こうちき)を着せて、扇を持たせるのが正式な死装束です。神衣も男女共に白い衣装を着るのが習わしとなっています。
神衣は、神職の格好であると同時に、神様を表す衣装とも考えられています。神道の場合、亡くなった方は神様そのものとなり子孫を見守ってくれる霊になるため、神衣を着せます。
キリスト教
キリスト教の場合、仏教や神道とは異なり、決まった形にの死装束はなく、スーツやドレスを着せるのが一般的です。
また、キリスト教では胸の上で手を組ませる形や手元に十字架やロザリオを持たせる形が多いです。
愛用していた服・着物やエンディングドレス
宗教的に死装束は異なりますが、最近は「その人らしさ」を重視して、個人の愛用していた服を着せたり、エンディングドレスを着せることも増えてきています。
その際、金属やプラスチックのついた服は溶け残る可能性があるので避けましょう。また、死後硬直により着せにくくなることがあるため、愛用してい洋服もサイズに余裕があるものや、伸縮性のある生地を選ぶと良いです。
死装束の装具
死装束の装具には様々な種類があります。
仏教の装具は6種類
仏教の死装束の装具は主に6種類です。仏教の場合、「旅支度のための格好」であるため、装具もそれに準じたものになります。
笠
頭にかぶる道具。浄土への旅の間、雨や日差しから頭を守るためにかぶります。
杖
歩きやすいようにするため道具。浄土への旅の途中、転んだりしないように、歩きやすいようにするために使われます。
手甲(てこう・てっこう)
腕を保護するための道具。寒さや日差し、木の枝などによる外傷から腕を守るために使います。
脚絆(きゃはん)、白足袋、わらじ
脚絆(きゃはん)は足を守るための道具。スネから下を守るも足ので、足の疲れを軽減するためにも使われます。
足袋・わらじは、浄土までの長旅を無事に歩いていけるように履かせます。
頭陀袋(ずたぶくろ)
首にかける小物入れのこと。旅に必要な荷物を入れられるようにするために首にかけます。
三角頭巾(さんかくずきん)
頭につける三角形の布です。三角頭巾は、閻魔様にお目通りするための正装、地位が高い人の冠を模したもの、魔除け、極楽浄土に向かって旅立つことを表しているなど諸説あります。
その他
仏教の場合は、比較的多くの装身具が入れられます。この他に、三途の川の渡し賃として「六文銭」を入れることもあります。今は印刷したものを入れるのが主流です。
中国から入ってきた考え方ですが、友引に葬式を行うと友人や家族が連れていかれてしまうと言われており、人の代わりに「友引人形」を入れることもあります。
神式の装具は男女で違う
死装束の時にも説明しましたが、神式では死装束の衣装が異なります。それと同様に装具も異なります。神式では神様の姿にします。
烏帽子(えぼし)
男性にかぶせる物。奈良時代から広く見られるようになったもので、袋状の被り物。
笏(しゃく)
男性が持つもの。細長い木の板であり、礼服のときに使います。
扇・扇子
女性が持つもの。扇か扇子を持たせて見送ります。
死装束ってどんな着物?帯の結び方や男女での違いはあるの?のまとめ
- 死装束の帯は縦結び
- 死装束は左前!ただし、浄土真宗の場合は右前に着せる
- 仏教徒の死装束は経帷子で、男女の違いはない。ただし、浄土真宗は死装束を着せない。
- 神式の死装束は男女で異なる。男性は白い狩衣と烏帽子を身に着け、笏を持たせる。女性の場合は白い小袿を着せて、扇を持たせる。
- キリスト教では故人の愛用していた服を着せる。最近は宗教に関係なく好きな服を着せたりエンディングドレスを着せることも多い。
- 死装束の装具は様々な物がある
いかがでしたか?死装束は宗教によって決まりごとが異なります。宗教ごとの決まり事は間違えないようにしましょう。
ただし、最近は「その人らしさ」を重要視することも増えてきています。人生の最期をどうしたいか、一度考えてみて、ご家族に自分の考えを伝えておくのもいいかもしれませんね。
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