あなたは、今までに「オゾン層が破壊されている」とか「オゾンホールが大きくなっている」という話を聞いたことがありますか?
きっと、聞いたことがある人が多いと思います。
とは言っても、オゾン層破壊について頻繁に報じられていたのは1980年代〜1990年代半ば。
最近はあまり聞かなくなりましたよね。
最近のオゾン層はどういう状態なのでしょうか?
この記事では、オゾン層破壊について今まであまり意識したことがなかった方のために、オゾン層破壊に対する対策や身近なところに及ぶ影響などをわかりやすく解説しています。
これをきっかけに、少しずつ環境問題に目を向けていきましょう!
Contents
オゾン層の破壊、対策しないと身近なところに影響が出る!
近年環境問題が深刻化していますが、オゾン層が破壊されているから対策しましょうと言われてもあまりピンとこないですよね。
私なら、環境問題と言われて真っ先に思い浮かぶのは地球温暖化です。
最近では「CO2削減」「脱炭素」についての話題がとても多いので、だんだんと自然に意識できるようになってきました。温暖化問題がなぜここまで浸透したのかというと、近年の異常な夏の暑さを身をもって感じているからだと思うのです。
最近では連日40℃近い暑さが続くこともあったので、ここまでくると「確かに最近の地球はおかしい」と実感せざるを得ません。
一方、オゾン層の破壊については1970年頃から問題視されています。
かれこれ50年以上にわたって問題になっているのに、なぜかあまり実感が湧かないですよね。
実際、オゾン層の破壊そのものと地球温暖化にはほとんど関係はないのだそうです。
それでも、オゾン層破壊への懸念が叫ばれ続けているのはなぜなのか。
きっと、他の部分に重大な問題があるはずです。
まずはオゾン層とは何なのかについて知るところから始めましょう。
オゾン層って何?オゾン層が破壊される原因と仕組み
そもそもオゾンとは何なのかから説明します。
オゾンとは、酸素原子が3つくっついてできている気体(O3)です。
そして、そのオゾンが大気の成層圏で高い濃度で層になっている部分をオゾン層と呼びます。
オゾン層の役割は、太陽からの有害な紫外線を吸収すること。
紫外線というとすぐに日焼けが思い浮かびますが、紫外線が及ぼす悪影響はそれだけではありません。
オゾン層は、地球を覆う薄いカーテンのようなもの。
そのオゾン層に人工的に作られたフロンという物質が到達すると、化学反応が起きて破壊されてしまいます。
フロンには塩素が含まれているため、オゾン分子から酸素を1つ奪って一酸化塩素分子と酸素分子に分解してしまうのです。
これが、オゾン層が破壊される原因と仕組みです。
引用:経済産業省HP
オゾン層を破壊する原因となるフロンは、人体に毒性がありません。
そのため、「エアコン」「冷蔵庫」「自動販売機」「冷蔵・冷凍ショーケース」「冷水機」「断熱材などの発泡剤」「半導体」「精密部品の洗浄剤」「ホコリを吹き飛ばすスプレー」など幅広く使われてきました。
こうしてオゾン層の破壊が進み、オゾンの濃度が薄くなった部分が穴のようになったもの...それが「オゾンホール」です。
オゾン層破壊の現状
一番オゾン層破壊問題が深刻だったのは1980年代~1990年半ばで、実は近年ではオゾンホールは年々小さくなり、回復傾向にあるのが現状です!
オゾンホールが改善したのは、【1987年】に「モントリオール議定書」というものが採択されたから。
モントリオール議定書では、オゾンを破壊する有害な特定フロンのひとつであるCFC(クロロフルオロカーボン)の製造・消費が禁止されました。
しかし、エアコンや冷蔵庫などを冷却するためにはフロンの代わりになる物が必要ですよね。
そこで、現在では「代替フロン」と呼ばれる別の物質が使用されています。
これでオゾン層は守られる...?
でも、安心するのはまだ早い!
代替フロンを使うことによる弊害があるのです。
オゾン層が破壊されるとどんな悪影響があるのか
では、オゾン層が破壊されると、私たちにとって具体的にどんな悪影響があるのでしょうか。
大きく分けて、2つあります。
オゾンホールができることによる悪影響
まずは、オゾンホールそのものが及ぼす悪影響から見てみましょう。
オゾンホールができた部分からは太陽の光が直接地表まで届きますが、太陽の光の中にはかなり有害な紫外線も含まれています。
紫外線には「UV-A」「UV-B」「UV-C」の3種類が存在する
UV-A
UV-Aは太陽から地表に届く紫外線の【約9割】を占めていて、私たちにとってとても身近な紫外線です。
日焼けは起こしませんが、知らぬうちに肌を弱らせてたるみの原因を作ったり、今すでにあるお肌のシミを更に濃くするなどの悪影響があります。
透過性があるので日傘では防ぐことができません。
知らず知らずのうちにじわじわとダメージが蓄積されていきます。
UV-B
UV-Bは太陽から地表に届く紫外線の【約1割】ほどしかありません。
こんなに微量でありながら、肌に当たると短時間で強いダメージを与えるのが特徴。
日焼けをしたときに肌が赤くなったり色素沈着が起こったりするのは、ほとんどがこのUV-Bの仕業です。
オゾン層はこのUV-Bの大部分を吸収してくれています。
UV-C
UV-Cは、目の角膜炎や白内障、さらには皮膚がんの発症など、強いダメージを引き起こす最も有害な紫外線!!
あまりにも危険なので、殺人光線と呼ばれることもあるほどです。
…とここで、1つ気づいたことがありませんか?
地表に届く割合が、UV-AはとUV-Bだけで【10割】になっています。
じゃあUV-Cはどこに...?
そうなんです、実はUV-Cはほとんど地上に届かないのです。
その理由は、「オゾン層が完全に吸収してくれているから」!
ありがとうオゾン層!!
大昔、海の生き物が進化して陸へと進出していきましたが、それが可能になったのもオゾン層ができてUV-Cがカットされるようになったからだとも言われています。
これを知ると、オゾン層がいかに重要な役割を果たしているかがわかりますね!
もしオゾンホールが拡大してしまうと、紫外線の中でも悪影響を及ぼすUV-Bや特に危険なUV-Cが吸収されず、直接地表に降り注ぎ...私たちは大変な危険に晒されるでしょう。
これが、オゾン層の破壊そのものによる悪影響です。
代替フロンによる地球温暖化
先述したように、特定フロンの「CFC(クロロフルオロカーボン)」は使うことを禁止されているので現在は使われていません。
その代わり、「代替フロン」というものが使われています。
代替フロンを使えば以前ほどオゾン層が破壊されることはありませんが、やはり弊害があり、他の部分で悪影響を及ぼしています。
代替フロンにも種類がありますが、おおまかに2つご紹介しますね。
HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)
つい最近まで使用されてきたHCFCは、オゾン層破壊への影響は少なくなった一方で、地球温暖化の原因となる温室効果ガスが二酸化炭素の約1800倍もあることがわかりました。
そのため、2020年に廃止が決定し、現在では特定フロンに分類されています。
とは言え、生産や輸入が廃止されても、多くの場所でHCFCを使用した製品は現在でもまだまだ使われているということです。
HFC(ハイドロフルオロカーボン)
HFCは、炭化水素化合物と呼ばれるものです。
塩素を含まずオゾン層を破壊しないことから、現在使用されている代替フロンの中では主流となっています。
しかし、問題なのはここから。
地球温暖化の原因となる温室効果が、なんと二酸化炭素の10,000倍近くにもなるというのです。
HCFCでさえ1800倍と聞いて驚きましたが、現在主流になっているものの方が桁違いに温室効果が高いなんて、とてもショッキングな事実です。
この問題を改善しないことには、温暖化は進む一方です!
そのため、2030年までには現在よりも30%以上削減し、2050年には完全撤廃しようという目標が定められました。現在は禁止ではありませんが削減対象とされています。
代替フロンによる地球温暖化を防ぐための具体的な対策とは
ここまで読んでみると、現時点でオゾン層の破壊は改善傾向にあるものの、一方で代替フロンによる地球温暖化が深刻になっているということがわかっていただけたと思います。
ここからは、具体的にどのような対策があるのかをみていきます。
ノンフロン製品を作るための技術開発・商業化
技術開発に関しては私たち個人がどうこうできる話ではありませんが、現在はフロンを使わずに冷却する技術の研究・開発が進んでいます。
ノンフロン製品ではフロンの代わりに主にアンモニアや炭化水素、二酸化炭素などが使用されます。
しかし、これらの物質はフロンに比べて燃えやすい性質があるなどの欠点があり、一般的に普及するのはまだまだ先のことになりそうです。
私たちができる具体的な対策は「正しいリサイクル」
では、現時点で私たちができることをお伝えします。
そもそも、エアコンや冷蔵庫・冷凍庫などに使われている代替フロンは、密閉された製品の内部だけで循環しているもののはずです。
普通に使用している分には、フロンが外に出ることはありません。
では、どのタイミングで大気中に排出されてしまうのでしょうか?
その大きな原因のひとつに、故障や買い替えなどで製品を廃棄する際に、正しくフロンが回収されていないことが挙げられます。
【2002年】以降にエアコンや冷蔵庫を処分したことがある方は、その際「リサイクル料金」がかかりませんでしたか?かかりましたよね!
「家電リサイクル法」や「フロン回収・破壊法」が制定されたからなんです。
もし、リサイクル料金がかからなかったという人がいたら…それは、正しく処分できていない可能性があります。
エアコンや冷蔵庫は、単なる粗大ゴミではありません。
実際に私の地域のゴミ収集ルールを見てみると、エアコンや冷蔵庫は「収集できないゴミ(リサイクル法に基づき処分)」と書かれています。
このリサイクル料には「フロンを正しく破壊する」ための料金が含まれているというわけです。
例えば、
- 何でも無料回収!即日引取!と宣伝
- 街の中をスピーカーでアナウンスしながら巡回
- 不用品回収のポスティング
こんなふうに宣伝する業者は、無許可で家電を回収している可能性があるので要注意。
このような業者は、分解して自分達に必要なものだけを集めて不法投棄することもあり問題になっています。
不法投棄された場合は、もちろんフロンの分解なんてされませんよね。フロンはそのまま放出されてしまうことになります。
このように、なぜリサイクル料がかかるのかを理解していないと、「リサイクル(何らかの形で再利用する)のに、なんでわざわざこっちがお金払わないといけないの?」と思い、つい安く処分できる方法を選んでしまいがちです。
こまめに意識して減らすことができる二酸化炭素とは違い、フロンについて私たちができるのはこんなにシンプルなことだけなのです。
オゾン層破壊は対策しないと身近なところに影響が!わかりやすく解説のまとめ
この記事を読んでくれた皆さんは、きっとオゾン層の大切さや対策について少しずつ意識が高まってきたのではないでしょうか。
簡単におさらいすると、
- オゾン層は有害な紫外線を吸収してくれている
- エアコンや冷蔵庫、車などに使われた化学物質「フロン」がオゾン層を破壊した
- 特定フロンの代わりに使い始めた「代替フロン」により地球温暖化が加速している
- 現在技術開発中の「ノンフロン製品」は課題も多く、普及するのはまだ先になりそう
- フロンが放出されるのは、フロンが使われている家電を正しく処分していない時!
- 正しいリサイクル=フロンの分解まで!
- 指定された家電を処分するときは、きちんとした手順でリサイクルしてもらうこと!
オゾン層破壊を改善しようと対策した結果、皮肉にも地球温暖化を更に加速させる原因が生まれてしまったわけですが、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて多方面で努力され続けています。
私たちも、まずは何が問題なのかを知り、ひとりひとりが正しい行動をすることで身近な環境問題に取り組んでいきましょう!