ウイスキーの原料は、穀物、水、酵母の3つとなっています。使用される穀物についてはウイスキーの種類によって細かい規定があり、例えば、スコッチやジャパニーズウイスキーのモルトウイスキーには、単なる大麦ではなく発芽されたものをつかいます。ここでは、ウイスキーの原料となる穀物の種類について見ていきたいと思います。
Contents
ウイスキーの原料となる穀物の種類について
ウイスキーの種類と原料について
生産国 | ウイスキーの種類 | 原料 |
スコットランド |
モルトウイスキー | モルト(大麦麦芽)のみ |
グレーンウイスキー | トウモロコシ、小麦、大麦、モルトなど | |
アイルランド | シングルポットスチルウイスキー | モルト、大麦、オート麦など |
モルトウイスキー | モルトのみ | |
グレーンウイスキー | トウモロコシ、小麦、大麦、モルトなど | |
アメリカ | バーボンウイスキー | トウモロコシ51%以上、モルト、ライ麦、小麦など |
ライトウイスキー | ライ麦51%以上、モルト、小麦など | |
ホイートウイスキー | 小麦51%以上、モルト、ライ麦など | |
コーンウイスキー | トウモロコシ80%以上、モルトなど | |
カナダ | フレーバリングウイスキー | ライ麦、トウモロコシ、モルトなど |
ベースウイスキー | トウモロコシ、ライ麦など | |
日本 | モルトウイスキー | モルトのみ |
グレーンウイスキー | 小麦、トウモロコシ、モルトなど |
ウイスキーの原料となる大麦の分類について
大麦は小麦、トウモロコシ、米とともに人類が食用とする重要な穀物です。その歴史は大変古く、人類が利用し始めたのは1万年ほど前を言われています。
大麦は小麦などと比べると、グルテンが少なく、粘り気がないため、粉にしても加工しにくいのが特徴と言われています。そのため、食用として用いられる以外に、ウイスキー、ビール、焼酎などの酒類や、味噌、醤油などの原料としても使われています。
大麦の品種には、二条種と六条種があって、それぞれ特徴が異なります。
・二条種
粒が2列になっているのが特徴。スコッチやジャパニーズウィスキー、ビールなどの醸造用の原料となります。通称「ビール麦」とも呼ばれています。
・六条種
粒が6列あり、上から見ると正六角形に実がなっているように見えます。麦飯、押し麦として、主に食用とされます。また麦者などに利用されるのも一般的です。
グレーンウィスキーでトウモロコシ、小麦などの糖化用に使われます。
二条大麦と六条大麦の違いについて
二条大麦(ビール麦) | 六条大麦 | |
種粒 | 大きい | 二条より小さい |
穀皮 | 薄い | 厚い |
デンプン | 多い | 少ない |
タンパク質 | 少ない | 多い |
エキス分 | 多い | 少ない |
酵素力 | 小さい | 大きい |
用途 | 醸造用、麦芽糖、デンプン | 食用、デンプン、資料 |
このほか、大麦は播種時期によって、春に種を播いて夏から秋に掛けて収穫する春播き(spring barley、春大麦)、秋に種を播いて初夏に収穫する秋蒔き(winter barley、冬大麦)に分類できます。
ウイスキーに用いられるのは主に春播きです。
また、脱穀時に皮が取れないものを皮麦、皮と粒がたやすく分離するものを裸麦といい、二条種の大部分は皮麦で、六条種の多くは裸麦です。
スコットランドにおける大麦について
19世紀以前のスコットランドで知られていた大麦は、ベア種(Bere、粗四条種)、ビッグ種(Big、粗六条種)の2つでした。ベア種は5000年前からある古代品種と言われています。
同じイギリスのイングランドでは、アーチャー種(Archer)が長らく主流でしたが、1826年(または1825年)にシェバリエ種(Chevalier)が発見され、これが1900年頃まで、主要品種となりました。
スコットランド産の大麦は、イングランド産に比べて生産量も品質も劣っていましたが、その状況に変化をもたらしたのが、1960年代後半に登場した、ゴールデンプロミス種(Golden Promise)でした。これは、イングランド産に対応できる品質を持つ画期的な大麦となりました。
以降、品質改良が続けられ、現在では、1ヘクタール当たりの収穫量も、大麦1トンから作られるアルコールの収量も格段に上がってきています。
日本におけるウイスキーの原料としての大麦について
二条大麦が日本で初めて栽培された時期については諸説あると言われています。1873年(明治6年)頃に、北海道の札幌醸造所(官営ビール工場)が醸造用品種を欧米から輸入して本格栽培がスタートしたとされています。スコットランドのシェバリエ種をはじめとする品種が導入されました。
1881年頃には、ゴールデンメロン種(Golden Melon)が、オーストラリアまたはアメリカからもたらされ、全国で栽培されることとなりました。
現在の代表的な品種には、ニシノチカラ、ミカモゴールデン、あまぎ二条、はるな二条、サチホゴールデンといった品種があります。ただし、国産の二条大麦はほとんどビールの醸造用となっており、ウイスキー用は殆どを輸入に頼っているのが現状です。
日本におけるウイスキーの原料としての小麦について
小麦は、1万2000年以上も前から食用として、利用されてきています。
この小麦を加えることによって、ウイスキーはよりマイルドな風味とソフトな舌触りが得られるようになっています。スコットランドや日本国内で製造されるグレンウイスキーは、現在トウモロコシに変わって小麦が主要原料となっています。
日本におけるウイスキーの原料としてのトウモロコシについて
トウモロコシは北米原産と言われており、デントコーン、ポップコーン、スイートコーン、フリントコーンの4種類に大別されます。このうち、ウイスキーに利用されているのは、デントコーンとなっています。ポップコーンはその名の通り、ポップコーンの原料として。スイートコーンは食用として、フリントコーンは家畜の飼料および工業用が主な用途となっています。
日本におけるウイスキーの原料としてのライ麦について
アメリカンウイスキーおよびカナディアンウイスキーにとって、なくてはならない穀物がライ麦です。ライ麦を使用することで、ウイスキーには、ライ由来のスパイシーでドライ、オイリーなフレーバーが加わると言われています。現在、ライ麦のほとんどは、ヨーロッパで栽培されています。
実はお米がウイスキーの原料となっている場合もあります
日本人の主食となっているお米も、実はウイスキーの原料の一つとなる場合があります。かつて、キリンシーグラム社(当時)がライスウイスキーを発売しています。(1994年、静岡県限定発売)。この他、アワ、キビ、オーツ、ソバ、キヌアといった穀物で、ウイスキーを実験的に製造している醸造所もあります。
特に、キヌアについては、アメリカのNASAが21世紀の宇宙食と絶賛する穀物となっており、南米ボリビアが原産国となっています。
アメリカのクラフトディスティラリーが、すでにこのキヌアを原料にウイスキーを製造しています。